第1部
ポルトガ〜バハラタ
人買いのアジト
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気迫るものがあったのか、有利であるはずの盗賊Cの表情に余裕はなかった。
「さっさと倒れろ!」
ナイフをかざし、私に向かって突っ込んでくる盗賊C。あまり接近戦は得意ではないのか、他の二人よりは隙がある。男のやや粗っぽい攻撃を易々とかわした私は体勢を極限まで低くし、油断してがら空きになった鳩尾目掛けて、渾身の正拳突きを放った。
「ぐはっ!!」
男の体は放物線を描くと、岩壁に勢いよく叩きつけられた。こんなに自分には力があったのかと、つい疑ってしまう。
取り敢えず、三人は倒せた。けど、もし気づいてタニアさんたちのところに行ってしまったら、今度はタニアさんたちが危ない。
「シーラ、タニアさんたちを連れていこう。ここにいたら危険だと思う」
「で、でもミオちん、大丈夫?」
「うん。この程度の怪我なら、薬草使えば大丈夫だよ。ほら、こんなこともあろうかといくつか持ってきてるから」
私はカーディガンの裏に縫い付けてある薬草を彼女に見せた。そしてそれを剥がし、そのまま口にいれた。
なんとなく体力が回復したのを感じながら、タニアさんのところへ向かおうとしたのだが――。
「待って、ミオちん。あたしが急いで行ってくるからミオちんはそこで休んでて」
私の返答も待たず、シーラは早足でタニアさんのもとへと駆けていった。
薬草を使ったとはいえ、一人で三人相手に戦ったのは想像以上に体力を消費するので、正直ありがたかった。
そのまま壁に背を預け、体力を回復しつつシーラたちがくるのを待つ。
―いくら星降る腕輪の力を借りたとしても、二人でここを脱出しようとしたのは無謀だったのだろうか。
人買いがやって来るのは夕方だし、おとなしくユウリたちが来るのを待っていればよかったのではないか?
でも、脱出のチャンスはきっとあのときが最後だったはず。もし万が一ユウリたちが間に合わなければ、結局手も足も出ず人買いに売られ、最悪ユウリたちと離ればなれになってしまう。
どう決断すればよかったのだろう。私にもっと力があれば、カンダタを余裕で倒せるくらい強ければ、こんな悩むこともなかったのに。
そんなことを一人で考え込むうちに、どんどん心細くなってきた。早く戻ってきて、シーラ。
すると、願いが届いたのか、こちらに向かう足音が聞こえてきた。良かった、早く戻って……。
―違う、シーラじゃない!!
音が聞こえてくるのは、タニアさんたちのいる方じゃない。盗賊たちがやって来た方向だ。
音が近づくにつれ、私の心臓の鼓動も早くなる。新手の盗賊か? もしくはユウリたちが来てくれたのか?
だが――。
「ほう。随分暴れてくれたじゃねえか」
結果は、そのどちらでもなかった。その投げ掛けられた言葉に、はっと息を飲む。
「おれの仲間をこんな目に遭わせるなんて、大した
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