第1部
ポルトガ〜バハラタ
人買いのアジト
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助けに来てくれることと、今日の夕方に人買いが来ることを伝えた。
「それじゃあ、勇者さんたちが助けに来てくれるんですね!」
グプタさんは歓喜の声を上げた。だが、予定よりもかなり時間がたっていることに不安を感じている私たちは、素直に頷くことが出来なかった。
「なら、その勇者さんたちがやって来るまで、私たちはここから動かない方がいいと思うわ」
タニアさんの冷静な判断に、私は一瞬言葉に詰まる。確かにそうなのだが、もし人買いが予定よりも早く来たら一貫の終わりなのだ。
「万が一を考えて、ここの牢屋の鍵を手にいれました。もし夕方近くになっても彼らが来なければ、これを使って逃げてください」
私は動揺を隠しつつ、淡々と二人に伝えた。グプタさんも今がけして喜んでいる場合ではないと察したのか、緊張した面持ちで私から鍵を受けとる。
「わかりました。ありがとうございます」
「今私たちが様子を見ます。脱出経路を確認したらまたここに戻りますので、待っててください」
「はい。あなたたちもどうか気を付けて」
グプタさんの言葉に頷くと、私たちは足早に彼らのもとを去った。
それから何事もなく、先程の二股のところまで戻ることができた。
「それじゃあ、行ってない道に行こうか」
私が促すと、シーラは突然歩みを止めた。
「待って、ミオちん。何か聞こえない?」
「えっ?」
そう聞き返した瞬間、複数の足音がこちらに向かって近づいてきた。
「まずい!」
こんなところで鉢合わせになったら、間違いなく捕まってしまう。どこか隠れるところがないか探してみるが、狭い洞窟の通路にそんな都合のいい場所があるはずもない。
かといってグプタさんたちがいる方に逃げ込むわけにもいかない。私たちがいた部屋に戻っても、倒れている男を目撃されれば、不審に思われてしまう。
「シーラは後ろに下がってて。ここは私がなんとかするから」
「!!」
私が攻撃の構えをすると、シーラは悲痛な表情で私を見据える。
「ミオちんだけに任せるわけにはいかないよ! あたしも戦う!」
「ありがとう。でも大丈夫だよ。私にはこの腕輪もあるし」
余計な心配をかけさせないよう優しく言ったつもりだったが、彼女の顔から不安の色は消えなかった。
やがて、足音と共に数人の盗賊姿の男たちの声が聞こえてきた。話の内容から察するに、食事係の人が戻ってこないから気になって来たようだ。
やって来たのは三人。男たちは目の前にたたずむ私たちを目にすると、カンダタと同じように下卑た笑いを浮かべた。
「今度の商品は、随分じゃじゃ馬なんだな。こりゃ買い手も見つからねえわ」
「別に売れ残ってもいいさ。俺たちが買い取ってやればいい」
「おとなしく牢に入ってろ。さもなければ少し痛い目を見ることになる」
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