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レーヴァティン
第百九十六話 鎌倉入りその十一

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「陣の者達のうっかりと漏らす話でもいいからな」
「あえてうっかりとですね」
「芝居で、ですね」
「そうして漏らした話でもいいですね」
「要は耳に入れることだ」
 城の中にいる者達のそれにというのだ。
「城の誰かが謀反や逃げ出しを企んでいるなりだ」
「内応もですね」
「そこは色々ですね」
「色々と言って」
「そうして惑わしますね」
「信じさせずともいいからな」
 疑えさせればというのだ。
「耳に入れることだ」
「そうして城の中で囁かせ」
「そうしてですね」
「疑わせる」
「それが狙いですね」
「そういうことだ、それだけでいい」
 噂を流させるだけでというのだ。
「それが亀裂になりな」
「割る」
「そうなっていくので」
「それで充分ですね」
「策としては」
「そういうことだ、そして陣の前に常に多くの砲を置いてだ」
 そうしたことも行うというのだ。
「常に敵に向ける」
「そうしますね」
「常にですね」
「その様にして」
「何時でも攻められる」
「そうもしますね」
「武器も向けてだ」
 その様にしてというのだ。
「そちらからも攻める」
「何時攻められるかわからない」
「多くの砲によって」
「それも見せていきますか」
「我等は」
「そうして徐々に攻めれば」
 その様に行えばというのだ。
「やがてはな」
「城は落ちますね」
「小田原の城も」
「そうなりますね」
「必ずな、戦わずして勝つをな」 
 まさにこのことをというのだ。
「ここでもしていく」
「一人も殺さずに城を手に入れる」
「城も街も全く傷付けずに」
「その様にしますね」
「そうする、豊かなものはそのまま手に入れることだ」
 一切傷付けずにというのだ。
「俺は欲が深いからな」
「そこでそう言われますか」
「だから傷付けず手に入れたい」
「民も田畑も街も全てそうされたい」
「城もまた」
「そうだ、欲が深いからだ」
 酒を飲みつつ話した。
「それ故にな」
「全く何も傷付けない」
「ありのまま手に入れられ」
「そしてさらに豊かにしていく」
「それがお望みですね」
「そういうことだ」
 酒を飲みながら話す、その飲む酒は自分で入れてそうして飲んでいる。控えている者達にも飲ませている。
「いいな」
「はい、では」
「その様にしましょう」
「欲は慎めといいますが」
「この場合はいいのですね」
「こうした欲は」
「戦わずにだ」
 そのうえでというのだ。
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