第百九十六話 鎌倉入りその八
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八万を越える大軍で小田原城を囲んだ、見れば小田原城は噂通りの巨城であり惣構えの見事なものだった。
街は城の中にある、しかも。
「城下町まであるな」
「はい、城の中だけでなく外にもです」
「街がありますね」
「そうなっていますね」
「それだけ小田原の街は栄えているか」
英雄はこのことを察した。
「凄いものだな」
「全くですね」
「江戸も栄えていてです」
「横浜や横須賀もですが」
「小田原もですね」
「栄えていますね」
「横浜や横須賀は湊で栄え」
そしてというのだ。
「小田原は道でだ」
「栄えていますね」
「ではですね」
「やはり無傷で手に入れたいですね」
「上様としては」
「俺は壊す趣味はない」
何かをというのだ。
「戦でもな、それよりもな」
「そのまま手に入れ」
「そのうえで、ですね」
「栄えさせる」
「それが上様の好まれることですね」
「そうだ、だからここもだ」
小田原の街もというのだ。
「そうしたい、だからここは策を使う」
「策?」
「策といいますと」
「銭は出す、全ての兵達に三食馳走を食わせろ」
そうせよというのだ。
「陣中でな、それも小田原に見せろ」
「兵達が馳走を食う姿を」
「それをですか」
「そして夜は騒げ」
そうせよというのだ。
「飲んで歌ってそして女も抱いてだ」
「あえてですか」
「騒いでいるのを見せる」
「そうするのですか」
「連日連夜な、陣の守りは固め」
それと共にというのだ。
「そうして騒げ、また城の中に絶えず城の誰かが裏切っただの幕府の者と会った様だの根拠はなくともだ」
「噂を流すのですか」
「そして揺さぶるのですね」
「城の中の者達を」
「最初は信じずともだ」
白の中の者達がそうした噂をというのだ。
「あまりにも多く常ならな」
「信じる様になる」
「そうなるのですね」
「信じずとも疑う」
そうなるというのだ。
「それがだ」
「狙いですね」
「上様にとっての」
「それですね」
「盤石なものであろうともだ」
例えそうでもというのだ。
「そこに亀裂が入ればな」
「その亀裂が徐々に深まり」
「そしてその石を割る」
「そうなりますね」
「疑わせるのですね」
「そうだ、疑いは亀裂だ」
この場合のそれだというのだ。
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