雪
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ああ!」
背負い投げという技で、引ったくりを地面に落とした。
「ぐはっ!」
目を回す引ったくりを見下ろして、友奈は荷物を掴み上げる。
「こういう悪いことは、しちゃ駄目だよ」
友奈はおばあちゃんに手荷物を渡す。
おばあちゃんは友奈に感謝を述べて、そのまま去っていった。
友奈はそのままランニングを続けようかというとき。低い気温が体を貫く。
「へっくし!」
友奈は体を震わせる。そして、その寒さの原因にも納得した。
「雪……」
香川にいた時も何度か見たことがある、白い結晶。友奈の手に乗っては、体温によって溶けていく。
「何か久しぶりだな……雪なんて……」
白い息を吐きながら、友奈は両手を広げる。
やがて雪は、どんどん景色を白くしていく。見滝原公園の森は、緑と白が共存する美しい森となっていった。
「美しい森……」
脳内に浮かんだフレーズを思わず口にする友奈。
近くではしゃぐ子供の姿も目に入る。その時、ふいに友奈の脳裏にサーヴァント、バーサーカーの姿もフラッシュバックした。
「……」
友奈は口を結び、しばらく子供たちを見つめる。姉と弟の兄弟らしく、互いに湖の近くを走り回っている。
友奈は何となく彼らに背を向け、元来たコースの方を走り出した。
もうどれだけ走ったか分からない。何も考えなくなったころ、不意に声が聞こえた。
「お? 友奈じゃないか」
振り返れば雪の中、友奈と同じ方向へジョギングをしているリゼの姿があった。
「リゼちゃん。おはよう」
「ああ。おはよう。トレーニングか?」
雪が降り始めたのにも関わらず、リゼは長袖の薄着を着ていた。肩だしで紫の縞々の服で、見るだけでも寒そうだった。
「トレーニングというか、日課だよ。それよりリゼちゃん、その恰好、寒くないの?」
「ああ、これか?」
上着がなければこの寒さは無理だと言いたくなる服装を見下ろしたリゼは、ニッコリと笑顔で答えた。
「寒さに対する耐性は、戦場においては武器になる! お前も鍛えておいて、損はないぞ!」
「一体どこの戦場に行くつもりなの!?」
友奈の声をスルーし、リゼは先の道(本来は友奈がスタートした地点)を指さす。
「さあ来い友奈! 一緒に、戦場の勇者を目指すのだ!」
「私そもそも勇者部だよ!?」
友奈は悲鳴を上げながら、リゼのマラソンに付いて行った。
「うおおおおおおおおおおおお!」
大声で走り続けるリゼの後ろ姿。それを追いかける友奈は、その姿に親友の姿を重ねていた。
「……」
先ほどまでのリゼにツッコミを入れていた友奈の表情は、一瞬で無表情となる。
ツインテールを揺らすリ
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