第102話『予選G』
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れた鍔に、銀色の眩い刀身。どことなく、神々しいオーラを感じさせる。これが彼の"聖剣"なのか。
「ギィエアァァァァァ!!!」
耳を塞ぎたくなるような不快な咆哮を上げながら、ゲノムはアーサーへと突進する。そのスピードはさっきよりも格段に早い。緋翼ならば間違いなく、防ぐ間もなく弾き飛ばされるだろう。
しかし、そんなゲノムの動きにもアーサーは眉一つ動かさず、冷静に剣を振るった。
「"聖なる剣戟"」
彼が剣で薙ぐのと同時に、白い光が辺りを埋め尽くす。そのあまりの眩しさに、たまらず緋翼は目を瞑った。
遅れて、衝撃波が骨の髄にまで響いてくる。なんだこの威力は。本当に剣を振るっただけなのだろうか。
辺りに静寂が訪れたところで、ようやく緋翼はゆっくりと目を開ける。そして目の前に見たのは、
「嘘……!?」
身体を上下に真っ二つに分断されたゲノムとその背後、扇状になぎ倒された木々がそこにはあった。そのあまりに圧倒的な光景を前に、緋翼は嘆息するしかない。これほどまでの一撃を見たのは、裏世界での一真以来だろうか。
こっちは一太刀入れるのにすらあれほど苦労したというのに、まさか一発で仕留めてしまうとは。やはり、レベル5の魔術師の称号は伊達ではないということか。
「ふむ、こんなところかな」
「す、凄い……」
「怪我は大丈夫かい? 緋翼ちゃん」
「は、はい、何とか。ありがとうございました」
あまりの驚きに、気安く名前を呼ばれてることを気にも留めずにお礼を返す。
これだけの大技に、アーサーは汗一つかく様子もない。レベルが違いすぎる。
その後、彼はちらりと腕輪を一瞥してから、「それじゃあね」と言って立ち去ってしまった。
「これが王者か……」
魔導祭優勝候補【覇軍】、さらにそのリーダー格ともなるアーサーの実力を目の前にして、緋翼は重いため息をつく。
決してゲノムは弱くなかった。それでも、アーサーの足元にも及ばなかったのだ。
「はぁ、情けな……」
格の差を見せつけられ、ポイントも奪われ、結果タイムロスとなっただけのこの現状を嘆き、緋翼は三角座りのまま腕に顔を埋める。
「私がもっと強ければ……」
「ギ、ギ……」
「はっ!?」
突然、不快音が耳に響き、緋翼は弾かれたように顔を上げる。するとそこには、身体を両断されたにも拘わらず、腕だけを使って上半身を起こそうとするゲノムの姿があった。
「まだ動くの……!?」
てっきりアーサーの一撃で葬ったものと思っていたが、なんてタフさだろう。
緋翼は即座に刀を構える。立ち上がることは……できなかった
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