第四話 出立
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へ避難すると、今度はラッセルがドルフに耳打ちをした。
「今の答えは三〇点だな。もう少し女心を学べ、ドルフ」
「どういう意味だ……?」
二人が何を言っているのかも分からず、ドルフは困惑するばかりであった。ユニとアニファの二人は、何やら盛り上がって話し込んでいる。意気投合するのは喜ばしいことだが、時折聞こえてくる自身の悪口に、ドルフは頬をひくつかせずにはいられなかった。
「はいはい。そろそろ行くよ、皆」
その場の空気を、リエンが断ち切る。全員の支度が整い、竜車を引く草食竜、アプトノスも調子が整ったようだ。
リエンとラッセルが竜車に乗り込み、続いて、アニファとハグをして別れたユニが乗り込む。最後に、結局何が何だか分からないまま、ドルフが乗り込んだ。
御者席のアイルーが角笛を鳴らす。『フォォオン』という独特な音が、夜が明けたばかりの静かな村に響き渡った。
「出発しますニャ。皆さん、身を乗り出さないようにご注意くださいニャ」
アイルーのその言葉と共に、竜車が少しずつ動き出す。少しずつ、ほんの少しずつではあるが、アニファとカジンが遠ざかっていく。
カジンは険悪感を孕んだ瞳でドルフを睨み付け、アニファは不安そうな表情で手を振っていた。それを眺めていると、ドルフの頭を、後ろからユニがはたいた。振り返せ、とでも言いたげに。
??こうして、彼らは村を出発した。エネルギー波が観測された、古塔の調査のために。
同刻・古塔 頂上
苔の生えた石床。崩壊した柱。遠くから差し込む朝陽に照らされて、古塔の頂上に一際大きな影が映し出された。
果たしてそれは、影なのか。それとも、『竜』なのか。
闇で染めたような黒と、血で染めたような赤。彼の竜はただ、古塔の頂上で静かに佇んでいた。
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