第三話 招集
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招集は、ある日突然行われた。
こんこん、と、玄関扉が軽く叩かれる。彼に来客があることは珍しい。誰かが来るという話も聞いていない。だが、先日のバークとの会話で浮上した話題。扉の向こうにいるであろう来訪者、ドルフの予想通りであれば、それはギルドの職員だろう。
依頼を受けておらず、村にいる間は毎晩、日記を付けることがドルフの日課である。来訪者は、ちょうど、ドルフが日記をつけ始めようと、紙と筆を用意した時に現れた。
仕方なく筆を机に置き、扉へ向かうドルフ。扉を開くと、そこにはやはり、ギルドの職員がいた。ドルフを食事に誘った新米受付嬢、アニファである。
「あの……こんばんは、ドルフさん」
「……ああ」
彼女の名前がアニファというものである、ということを、ドルフは最近になって漸く覚えた。一人で勝手に、今まで名前も覚えていなかった罪悪感を覚えながら、彼は口を開いた。
「招集か?」
「ええ……はい。ギルドまでご同行お願いします」
「分かった。少し待ってくれ」
アニファの返事も予想通りだった。他に何か、問題を起こした覚えもない。例の一件だろう。大方、調査のメンバーが今になってやっと決まった、というところか。
部屋着から装備に着替えようと、扉を閉めようとするドルフ。しかし、それをアニファが止めた。
「あ、今日はお話だけですので……装備は結構です」
「そうか、分かった」
財布と護身用のナイフだけを持ち、ドルフは家を出た。ギルドまでの道中、彼らは二人だったが、そこに会話はない。少し気まずい雰囲気が流れつつも、二人は無事に集会場に到着した。
(…………)
集会場に一歩踏み込んだ瞬間、ひりついた空気がドルフの頬を刺す。刺々しく、それでいて重々しい。いつもの集会場にはない緊張感のようなものが張り詰めていた。
「こちらです」
アニファに案内され、奥の部屋に通されるドルフ。滅多に入ることのない小さな個室には、ドルフを除いて四人のハンターと、二人のギルド職員、それからドルフを連れてきたアニファの、計八名がいた。
「アニファ、ただいま戻りました」
そう言って頭を下げると、二人いた職員のうちの一人、ベラーナ村ギルドのギルドマスターであるバッゾが小さく手を挙げた。
「ご苦労。下がっていいよ」
元ハンターで、今なお現役時代に見劣りしない屈強な肉体を維持しているバッゾ。優しい声で告げられた、彼のその短い言葉に、アニファは少々悲しげな表情を浮かべ、そして再び頭を下げた。
「……はい。失礼します」
それだけ言って、アニファは退室してしまった。彼女の役目は、あくまでドルフをここまで連れてくるだけ。それより先の話を聞く価値はないと判断されたのだろう
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