第二話 ベラーナ村
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緑豊かな自然の中に、森を切り拓いて築かれた村があった。
ベラーナ村。
小さな村ながら、村や街を繋ぐ交易路の間に位置しており、多くの人で賑わう村である。また、鍛冶場や雑貨屋、食堂などといった、ハンターには必須となる施設も揃っており、この村を拠点とするハンターも少なくはない。
大剣使い、ドルフもまた、ベラーナ村を拠点とするハンターの一人であった。
ギルドの扉を叩き、巨大な剣を背負ったドルフは、左手にこれまた大きな素材袋を持っていた。その中には、今回の目標であるバサルモスの素材が仕舞われている。
獲物はあれほどの巨体だが、そこから獲れる素材はそう多くない。攻撃によって損傷した甲羅や鱗は使い物にならないし、鉱石や肉ばかりを主食としているモンスターの肉は、不味くて食えたものではない。
何より、ハンターとしての掟で、討伐したモンスターの素材を獲り尽くすことは禁じられている。ハンターは皆、それがたとえ自らが狩ったモンスターであっても、その一部を自然に還す義務がある。ハンターは駆除者でも、駆逐者でもない。必要以上の狩りをしてはいけないし、あまり目立つ振る舞いをしては、ギルドから処罰が下る。
『ハンターとは、自然と共に生きる者である』
かつて、尊敬するハンターが言っていた言葉だ。あるいは、それ自体も受け売りなのかもしれない。処罰が下っては、狩りができなくなる。狩りができなくなれば、金も稼げなくなり、生活もできなくなる。ドルフもギルドに所属するハンターである以上、その掟には従わなくてはならない。尤も、そういった束縛を嫌い、野良で活動するハンターもいる、という噂もあるが。
「あ、ドルフさん!」
ドルフの姿を見つけ、カウンターの奥にいる受付嬢の一人が、声をあげた。
赤い帽子と、同じ色の制服。金色の髪を揺らし、まだ幼さの残る笑みを投げかけたのは、一年前に働き始めたばかりの、新米受付嬢だ。名前は、何と言っただろうか。
仕事をしてくれるなら、新米だろうがベテランだろうが、誰でも構わない。それがドルフのスタンスである。彼は真っ直ぐ、声をかけてきた受付嬢のもとへと向かう。
「お帰りなさい、ドルフさん。今回はお早いご帰還でしたね」
「火山はそれほど遠くないからな。暑くて敵わないが」
そう言って、ドルフはカウンターに素材袋を置いた。今回の依頼内容は、バサルモスの討伐そのものではない。どこかの金を持った男が、バサルモスの目元付近から獲れる希少な鉱石を欲しがったのだ。ハンター達の間では『岩竜の涙』と呼ばれる、桃色の鉱石。武具の作成にも使える硬度の高い鉱石で、依頼でもなければ、ドルフ本人が持ち帰っていただろう。
素材袋の中から、小さな袋を取り出す、涙はその中に入
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