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モンスターハンター 隻腕のドルフ
第二話 ベラーナ村
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はまたも、首を傾げた。

 アニファの目には、ドルフがそれほど無愛想な人間には見えなかったからである。確かに表情の変化は乏しいものの、依頼の報告の時は少しずつ違う表情をしているし、割の良い仕事を見つけた時は微笑んでいるようにも見える。

 何より、まだ働き始めて日が浅かった頃。流れ者の厄介なハンターに絡まれていたアニファを助けたのは、他ならぬドルフだ。

 いつか、あの時のお礼をしたい。そう思いながら、もう一年も経ってしまった。食事というのは、そういった意味も兼ねてのものだ。


(……ドルフさん、良い人、なんだけどな……)


 皆が皆、彼のことを悪く言う。少しもやもやした気分になりながらも、彼女はそれを良い方向へ考えることにした。今はまだ、ライバルはいない。彼が良い人だということは、私だけが知っている。そんな風に。





 ここ、ベラーナ村の鍛治工房は、村の規模に比例して、こじんまりとしたものだ。鍛治職人は四人。『オヤジ』と呼ばれ、この鍛治工房の主人でもあるバーク。バークの一番弟子であるベルド。バークの息子で修行中の、オージーンとフレッド。

 規模こそ小さいものの、バークの腕は確かだ。一度だけ、別の村の工房を訪れたことがあるが、バークとは比べ物にならないほど質の悪いものだった。そう考えるとここを拠点にしているハンター達は運が良い。

 装備とは、ハンターにとっての生命線。質が悪ければ死に直結する。ハンターがクエストで稼いだ金の大半を装備に費やすのは、単に『死にたくない』という気持ちが強いからだろう。ごく稀に、動きが鈍くなるという理由で、防具を纏わずに狩りをするいかれたハンターも現れるようだが。


 ドルフが工房の扉を開くと、中は珍しく閑散としていて、他の客は一人もいなかった。静かな工房内では、金属を打つ槌の音が余計に大きく響く。


「バーク」
「んぉ? おぉ、ドルフじゃねえか。帰ってたのか」
「今報告を済ませてきたところだ」

 呼びかけると、バークはすぐに反応した。弟子であるベルドに後を任せると、カウンターへやってくる。

「今回はどこ行ってたんだ? 森か? 沼地か?」
「火山だ。バサルモスの素材の納品依頼でな」
「バサルモスか。お前なら余裕だろ、ドルフ」

 笑いを浮かべながら、バークが言った。ドルフの表情は、硬いままだ。

「……余裕なんて無い方がいい。特に、ハンターはな」

 そう言って左腕からスリンガーを外すと、カウンターに置いた。

「メンテナンスか?」
「ああ」

 狩りでスリンガーを用いるようになって、これで三度目。特に不調をきたしているといったわけでもないが、試験運用段階であるため、ギルドから定期的なメンテナンスと耐久性のチェックを推
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