第二話 ベラーナ村
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えず、顔を半分だけ、後ろへと向ける。
「なんだ?」
「あの……今度、お食事でもいかがですか? も、もちろん、ドルフさんにお時間がある時で構わないんですが……」
ドルフは困惑した。今まで、女性から食事に誘われた試しなど一度もない。それも、歳が下の、若い女性から誘われるなど、想像もしていなかった。
ここで断って立ち去るのは簡単であるが、あまり無碍に扱ってはギルド内での心象も悪くなる。ただでさえ『嫌われている』自覚があるのだ。唯一、彼を嫌ってはいないであろう若い受付嬢を突き放すのも、あまり得策だとは思えなかった。
「……考えておく」
「はっ……はいっ、ありがとうございますっ!」
答えに悩み、細かいことは少し先の自分に任せてしまおうと、ドルフはそう答えた。盛り上がる受付嬢を他所に、今度こそ、彼はギルドを立ち去った。
残された若い受付嬢……アニファのもとへ、彼女の先輩にあたる受付嬢がやってきた。彼女の表情は、アニファのように明るいものではなかった。
「アニファ……本当に誘ったの?」
「えっ、あっ……はい……さそ、っちゃいました……」
『誘っちゃいました』というアニファの言葉に、受付嬢は深いため息をこぼした。
まだ一年目のアニファとは違い、この受付嬢はベラーナ村のギルドで働き始めて七年になる。ギルドの中でも中堅クラスに位置しており、ドルフのことも昔から知っていた。
だからこそ、何故後輩であるアニファが、ドルフを食事に誘ったのか。その理由が分からないでいた。
「……まったく。あんな無愛想な男のどこがいいんだか」
「え、無愛想……ですか?」
受付嬢の言葉に、アニファが首を傾げる。
「無愛想じゃない。笑わないし、会話もない。淡々としててつまらない男。割と色んな人からよく思われてないのよ、あの人」
『腕は良いけどね』、と、申し訳程度のフォローを加える受付嬢。ドルフはこの村を拠点とするハンターの中でも、トップクラスに位置する実力者だ。一般人では持ち上げることすら不可能である巨大な剣を、いとも容易く振り回してしまう腕力。優れた洞察力と、判断力。ハンターに必要であるとされる素質の全てが高水準に達しており、まさしく『ハンターになるために生まれたような男』であった。
しかし、その代償か、ギルドでも村でも、彼は『無愛想な男』として名が売れていた。笑わない、会話が続かない、生気を感じられない。たびたび他のハンターと揉め事を起こしては、何食わぬ顔でいなくなり、狩りに出かけてしまう。それでは、嫌われても当然だ。
「あと、謝らないし、感謝もしない。私苦手なんだよね、あの人。依頼の報告も、ずっと真顔だから気まずくて」
「そう……ですか……?」
アニファ
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