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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第二部 黒いガンダム
第五章 フランクリン・ビダン
第一節 救出 第二話(通算82話)
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のためにも確認しておかなければならないと感じていた。

「なんです? エマ中尉」

 カミーユは月生まれで半分地球育ちだが、本人はスペースノイドのつもりである。ティターンズに好意的になれる理由がなかった。そう言う気配が濃厚に漂っており、エマは最初、人選に抗議をした。だが、返事は簡単で「ならば作戦を諦めるのだな」というものだった。あの赤い彗星のごときクワトロ大尉は、さらりとそう言ってのけた。

 エマからすれば、自分に――いや、ティターンズに対する悪感情は後回しにして欲しかった。だが、そんなことを言っても始まらない。年下の少尉に掻き乱されて作戦を失敗しないためにも、相手は新米なのだからと、自分に言い聞かせた。

「不服でしょうけど、作戦中は私の指示に従って。いいわね?」
「いいも悪いもないんでしょ……なんで人殺しのティターンズなんかと組まなきゃならないんだ」

 カミーユは臆することなくいい放った。私は違うと言ったところで、カミーユの反感が和らぐ訳ではない。そして、撃ったジェリドが悪いのではなく、命令を下したバスクに全責任があることを説明しても同じだ。民間人であるメズーンの母親を自分の仲間――ティターンズが殺したたことは事実なのだから。それでも――

 エマは足掻きたかった。このまま何もせず《アレキサンドリア》に帰投することはできなかった。少しでもいいから汚名返上の機会が欲しかった。

「文句でも愚痴でも抗議でも、何を言っても構わない。後で全部聞いてあげる。でも、今は私に従って」

 静かに、だがはっきりと、釘を指す。レコアからカミーユの命令違反に気を付けるように言われていたからだ。今回の作戦で命令を無視されては元も子もない。

「違反したら躊躇わない。いいわね?」

 何をとは敢えて口にしなかった。口にもしたくないことだ。

「解ってますよ!そんなことを言うなら、人質を救出できなかった時、ボクが貴女を撃ちますよっ!?」

 これが若さなのだろうか。たった二つしか違わないというのに、エマからは既に失われた熱さだった。それは大人になるということなのかも知れないが、同時に人を傷つけまいとする心の距離とも言える。若さはそういう互いのプライバシーともいうべき領域を軽く飛び越えてくる。

――だから、ジオンが生まれた?

 それも思考の硬直なのだろうか。宇宙では人の認識力が拡大してニュータイプになり、人の革新が始まるという。それは地球の重力に魂を引かれた者からすれば、若者の無遠慮さに似ているのかもしれないと、エマは思った。
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