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幻の月は空に輝く
日向宅訪問・3
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は気に食わないらしく、空になった湯飲みをお盆へと乗せて再び部屋の外へと出て行く。
 何か一言ほしいけど、待っててもまったく問題はないだろう。
 さっきは見る余裕がまったくなかったけど、ネジの部屋は物が少ない。本棚と箪笥。それと机ぐらいで特に何かがあるわけじゃない。
 本棚の本を見てみれば、忍術書ばっかり。
 私の部屋にもあるけど、基本的に本棚の数からして違うもんね。つまりネジとは違って娯楽系も相当の数がある。
 多趣味だからと一言で済むけど、結局は移り気なだけかもしれない。
 徹底したネジの書物の選び方を見ながら、ふと気になる書物の手を伸ばしかけ、やめた。
 手に取るのはネジの許可をとってからだよね。
 浅く広く状態の私だけど、忍術や武術、近接、暗器、それ系の事には真面目に取り組んでいたりする。
 書物もそれなりに集めて読んだりしてるけど、ネジのこれは知らないやつだ。
 巻物も置いてあるけど、流石にこれは何が書いてあるかまったくわからない。

 興味深げに本棚を見てたら、今度はしっかりと足音を消しながらネジが煎れたてのお茶を持って部屋に帰ってきた。気配は消しきれていないから、足音が消えていても今の所それ程効果のない状態。
 ネジの事だから時間なんかかけずに気配まで消しちゃうだろうけど。
 そんなネジが持ってきたお盆の上を見てみれば、先ほどはなかったはずのお菓子の山が見えた。

「……」

 少し時間がかかったのはこれが原因かとネジを見れば、無造作に包みを解いたお菓子を私の口の中へと押し込んだ。
 どうやら、分かりやすく照れ隠しに走ったらしい。
 
「……(お茶だけにしては時間がかかったなぁ、って思ったけど)」

 お菓子の用意と、先程の照れが襲ってきたんだろうと思う。口の中に押し込められたクッキーを咀嚼しながら、照れくさそうに瞳を伏せさせるネジをしっかりと見てみる。
 そしたらまたクッキーを押し込められたけど。
 でも、さ。これも結構恥ずかしいんじゃないのかなぁ。


「何だ?」

「いや……美味いな、と思っただけだ」

 ギロリと睨みつけるように私を見るネジに、私はお菓子の感想を述べながらもとりあえずお返しを決行する為に手早く包みを外し、右手の親指と人差し指でクッキーを挟み込む。

「だからネジも食べろ」

「──ッ」

 私の言葉の意味を理解するよりも先に、準備してあったクッキーを口の中へと放り込んだ。驚きと羞恥で目を見開き、顔を真っ赤にするんだけどさ…。

 それ…何回もやられたからね?
 流石の私も結構恥ずかしかったからね?

 私の言いたい事がわかったのか、ネジは大人しく熱めのお茶を飲みながら、そっと視線を逸らした。

 やっぱ、子供同士でも食べさせるのは照れ
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