第四章
[8]前話
ハイドリヒは王冠が置かれている場所に赴いた、そしてその王冠を被ってみせた、そしてすぐに元の場所に戻して周りに言った。
「これで私が一年のうちに死ななければだ」
「これは迷信である」
「この王冠にまつわる話は」
「そうなりますか」
「迷信なぞ信じて何が出来る」
冷たい冷笑で述べた。
「それがわかる、では仕事に戻るぞ」
「では」
「その様に」
ハイドリヒは全く意に介していなかった、もう既に王冠は見ていなかった。だが周りは王冠を見て若しやと思っていた、そして。
ヒムラーはその話を聞いて周りに漏らした。
「若しかしたらな」
「ありますか」
「あの王冠の話が」
「実際にですか」
「そうかもな、彼は警護をつけない」
自分の周りにというのだ。
「己の安全に気を使わない、ならな」
「それならですか」
「あの方は」
「そうかもな」
こう言う、そして。
自身にとって政敵でもある彼に何かあればその時はと内心思いつつだ、ハイドリヒに一応注意はした。だが彼はそれを聞かず。
チャーチルと現地のパルチザンの工作によって彼は負傷した、そしてそこから回復に向かうかと思われたが死んだ、王冠を被って一年も経っていなかった。皆それを見て思った。
「あの王冠の呪いだ」
「ボヘミア王に相応しくなかったからだ」
「だから死んだのだ」
「実際あの様な男王に相応しくない」
彼の非常に有能だが冷酷で残忍な統治と性格から言うのだった。
「実際あの地でも非道だった」
「それで何故あの地の王に相応しい」
「ああなって当然だ」
こう言うのだった、そして。
ボヘミア王の王冠にはやはりその呪いがあり言い伝えは真実だと思うのだった。
ハイドリヒがボヘミア王の王冠を被り一年と経たないうちに死んだことは事実である、この王冠にそうした言い伝えが存在することも。果たしてこの言い伝えが真実はどうかはわからない。だがハイドリヒが被って一年も経たないうちに死んだことは紛れもない事実である。真実はわからない、だが事実はそこにある。果たしてどちらが実であるのか。それは人手は誰もわからないことであろうか。
ボヘミア王 完
2020・12・13
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