第四章
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「あの人は」
「そして差別もな」
「あったのね」
「終戦直後はな」
「そうだったの」
「しかしお前は違うか」
「ええ、本当に差別されたことはね」
肌のこと、つまりハーフのことでとだ。娘は父にまた答えた。
「一度もないわ」
「時代が変わったか、時代が変わるとな」
「差別もされなくなるの」
「差別も変わるか」
父は考える顔で言った。
「そうなるか」
「そうなのね」
「ずっと同じ人種や民族の人が差別され続ける」
「それはないのね」
「そうだな、そういえば私もかつてはアイスランド系やイタリア系が差別されていたと言った」
自分のかつての言葉を思い出した。
「そうだな、それでお前も差別されていない」
「皆本当にね」
「そうだな、だったらな」
それならというのだ。
「私もいい」
「私が差別されなかったら」
「色々と先入観は持たれていてもな」
それでもというのだ。
「それならな」
「いいの」
「ああ、それならな」
自分の娘が差別されていないならというのだ。
「それならな」
「そうなのね」
「よかった、しかしな」
「しかし?」
「差別されてもだ」
それでもとだ、父は娘にこうも言った。
「負けるな」
「差別に」
「そうだ、そんなものに負けるな」
絶対にという口調での言葉だった。
「いいな」
「それはなの」
「そうだ、もうだ」
それはというのだ。
「何があってもな」
「これからそうしたことがあっても」
「そうだ、いいな」
「ええ、そうしたことがあってもね」
夕花は父に将来はわからないがと答えた。
「それならね」
「そうしろ」
「わかったわ」
「そうだ、しかしその頃は日本でも肌の色で差別されたが」
「今もいるかも知れないわね」
「しかし殆どなくなっている様だな」
「少なくとも私はそうされた経験がないから」
事実そうでというのだ。
「もうね」
「ないと言えるな」
「そうね」
「時代が変われば差別も変わるな」
父はまた娘に言った。
「ならそのことは覚えておこう」
「そうするのね」
「いいことを学んだ」
こう夕花に言った、そしてだった。
このことを生徒達にも教えた、そして夕花はというと。
肌のことで差別されることなく過ごしていった、黒人の血を引いているから運動や歌やダンスは元々得意と思われながら。だが差別はされなかったことは事実であった。それは彼女にとっては過去の話だった。
ハーフも今は 完
2020・12・15
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