第四章、その3の2:天運重なり
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うなのに柄半ばからぽっきりと折れてしまったのが勿体無い。余りに身勝手な言動に呆れから変じて、段々と腹立たしさを覚えてくる。
「俺らは入ってきたがよ、捕虜はどうなんだ?連れて来られた人達だって人間だろ?」
「あれは食用だ。捕虜は羊と同じだ。そもそも人間として見るのも問題だろう」
「・・・・・・つくづく、お前腐ってるぜ。お前みたいな連中がエルフに対する偏見を増長させているんじゃないのか?」
「だから貴様はっ!!!!」
いきり立った棟梁は戦槌を両手で確りと握ると、それを上段に思いっきり振り被る。慧卓は思わず顔を守ろうと手を掲げた。
「減らず口をっ、たたくーーー」
瞬間、突如として「ばりんっ」と部屋の窓が割られ、重たい物が床に落ちる音が響き、ついで押し殺された苦悶の声が耳を突く。手を下ろした慧卓が眼にしたのは、割られた窓ガラスと床に落とされた戦槌。そして右手にぐっさりと貫かれた矢を睨みつける、棟梁の姿であった。
「っっっっっっ、なっ、なんだ、これはぁぁっ・・・!!!」
「っ!!まさかっ!!」
慧卓ははっとして窓の外を見遣る。寝台に倒された彼には見えないが、建物の裏口に面する窓に弓を射たのは、果たして、救援に駆けつけた近衛騎士アリッサ達であった。近くに捨ててあった弓矢がこの功を挙げさせたのだ。その弓も一矢を射て用無しとなり、再び木に置かれたが。
「お見事です、アリッサ殿」
「造作も無い事だ。・・・さて、賊共の注意は逸れたであろう。突入と行こうか」
「はっ、お供致しますっ」
それぞれ抜刀して、四人は堂々と裏口から侵入していく。ばたついた駆け音が覚醒している男達に届くのは直ぐの事であろう。
上階の慧卓は急な展開に驚き、そして戸惑ったままでいた。
(えっ、なに?なんなのこれ?チャンスなのっ?)
「くそったれっ、敵襲かっっ!!!」
棟梁は苦痛を漏らしながら手から矢を引き抜き、武器棚に掛けてあった剣を左手で抜き払う。よくよく見れば、慧卓から取り上げた剣であった。
(あ、全然大丈夫そうじゃん)
「おい貴様っ!貴様を殺すのは後回しだっ!!」
「え?あ、はい」
「くそっっ、なんでよりによってぇ利き手にっ!!」
喚きながら棟梁は部屋を出て行く。外側から鍵を掛けられた。
「・・・さってとぉ、どうやって抜け出そうかなぁ?」
口の中の傷を舐めながら慧卓は思案を巡らす。そして、床に落ちている戦槌に目をつけて、にやりと頬を歪めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
蛮声轟き、剣戟が交わす音が聞こえる。「侵入者」と、賊の声が響いたと思ったら遠くで悲鳴が上がった。騒ぎはかなり血生臭いものであるらしく、一室に監禁されていたユミルらもそれを確かに聞き
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