第四章、その3の2:天運重なり
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く外せない。
慧卓は指劇場を終いにして言う。
「俺達、こんな格好してますけど、こう見えて王国の騎士とその従士なんです。俺が騎士で、ユミルさんが従士」
「えっ?逆に見えたんですけど」
「こんな浮付いた従士など俺はいらんわ」
「場の緊張を和まそうとしているだけですよ!かっかしないで下さいって!」
そうこう話していると、どんっと、乱暴に部屋の戸が開かれる。慧卓を剣で脅した男が現れた。
「おい、そこのクソガキ」
「二人いるけど」
「お前だよ!!口の減らないガキンチョっ!!棟梁がお呼びだ、さっさと来い!!」
「へーい。んじゃ、また後で、ユミルさん、リコさん」
「喧しいっっ!!!!」
男が慧卓のロープを解き、立ち上がらせた。こつこつと慧卓が部屋から出るのを待ってから、男も出ようとしてぐいと腰を引っ張られる。ベルトの辺りをユミルが掴んでいた。
「おい、あいつにあまり乱暴するなよ?後で痛い目にあうぞ」
「うっせぇ、離せ!!」
乱暴に手を払ってから男は部屋を出て戸を閉める。ぼぉっと見遣ってくる慧卓の態度が気に入らず、むかむかとして声を張り上げた。
「ほら、さっさと歩けっ!!」
苛立ち紛れに尻を強く蹴り付ける。露骨な舌打ちには睨みで返し、男は建物の三階、即ち最上階へと慧卓を連れて行く。棟梁の部屋はそこに置かれているのだ。
肉が薫り空腹が込み上げつつも部屋の前に着くと、どんどんと男は戸を叩く。
「棟梁、連れてきました」
『入れ。二人ともだ』
「は?あ、はい」
野暮ったい声が中から響き、男は戸惑いながらも部屋に入る。蒸せるような血肉の香りに慧卓は俄かな吐き気を覚える。果たして穢れた寝台に座っていた人物は、顔中が髭だらけであり、沸いた虱をそのままにしているようであった。髪はぼろぼろで、人非ざる切れ長の耳をほとんど隠している。慧卓が初めて出遭ったエルフとはこのような人物であり、感動どころか嫌悪感しか抱けないものであった。
棟梁は害意が滲んだ声で賊の男を問う。
「おいお前」
「な、なんですか?」
「俺はついさっきまで、侵入者が入っているとは聞いてなかったぞ。何時入ってきた?」
「き、昨日の深夜です」
「お前は何をしていた?」
「け、警備ですが・・・」
「全うな警備をしていた奴なら、俺にその事を、よりによって今日の朝食の時間に伝えるような馬鹿な真似はせんがな?・・・警備中に居眠りでもしてたか?」
「いえっ、んな真似はしませんって!本当にっ!!」
「嘘でしょ、それ。俺結構あっさり侵入できたよ」
「て、てめぇっ!?!?」
ぼそっという慧卓の襟首を掴み男は必死の抗議を言わんとするも、剣が鞘から抜かれる音に吃驚して棟梁を見遣った。窓の光に照らされて、磨り減らされた鉄
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