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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の2:天運重なり
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矢を番えると、ひうとそれを放ち、旗を棒から千切り取る。青々とした明るい宙に旗が毀れて、風に添うようにひらひらと泳いでいった。



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 からから、からからと馬車の車輪が地を撫でる。草と石をどけただけの街道に出来た一つの轍に沿うように、幾つもの馬車が続いていく。天候は快晴で、夏の暑さを幾分か取り戻しているようだ。

「・・・暑いよー。ひもじいよー」
「黙っていろ」

 二台目の馬車の天井にまたもや慧卓はロープで貼り付けられている。愛馬であるベルはユミルの手綱捌きによって調伏されてしまった。彼を助ける者は、この馬車の列には居ない。

「・・・かったりぃぃっ・・・」

 頭に乗っかる冷たく湿った布だけが助けであった。彼が座る筈だった馬車の席には今ではリコが座っており、うら若き三人の女子がそれに群がっていた。

「大丈夫?まだ痛い所とかない?お姉さんが膝枕してあげよっか?」
「いや大丈夫ですからっ、そんな近寄られたら・・・」
「リコ。もう少し素直にならないと駄目でしょう?つい先日までずっと苦しんでいたんだから、今はゆっくりしていってもいいのよ?」
「で、でも、ケイタクさんに悪い気が・・・」
「あんなのは放っておけ。あいつの独断行動に付き合わされるこっちの身になってみろ?正直殴りたくなる」
「そうですよね?時折思うんですけど、あの人って考え無しに突っ込む所がありますから。それも嬉しいんですけど、でも時と場合を弁えていただかないと」
「うーん・・・正直あの人を援護したいんだけど、今回のはちょっと無理かな。幾らなんでも無謀過ぎるし、周りの人の気持ちを考えていないと思います」
「そういう訳だ、リコ少年。君はここで寛いで、エルフの街に着くまで身を休めるといい。それが君の特権だ」
「な、なんだかなぁ・・・」

 狭そうに縮こまる彼を他所に女子三人によるかしがましき言動は続いていき、ある事無い事が口から出ていく。その大半が仲間に対する噂と批評であり、同室のリコはそれを生涯絶対に口にしまいと固く誓った。

「暑いよー。辛いよー」
「やーい、バーカバーカっ。自重が出来ないバーカっ。酷い目にあって当然だね、バーカ。バーカッ!!」
「馬鹿馬鹿うっせぇぞ、盗賊っ!!てめぇ何寛いでんだよっ!何俺のロープ折り畳んで枕作ってんだよっ!!」
「いやぁ、楽でいいなぁっ。枕はふっかふかだし、傍には水筒もあるし、超快適だなぁっ!」
「お前絶対覚えていろよ!?向こう着いたら絶対ベッドに鋲を仕込んでーーー」
「黙れぇぇっっっっ!!!!」

 雷にも近き怒声が天を轟き、諸人の呆れと溜息を誘った。慧卓は億劫げに天を仰ぎ、燦燦とした光を受け入れぬかのように瞳を閉じる。瞼の裏では夕焼けの波間
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