第四章、その3の2:天運重なり
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力外扱いされている事に腹立たしさを覚えているのだ。
そんな風に歩いていると村の外れまで来ており、人影が無い事に気付いた。これは拙いと思っていると、目の前に三人の鎧姿の男が現れた。パウリナにとっては見覚えのある顔である。
「失礼致す、パウリナ殿」
「うわ、吃驚した。・・・えぇっと、ジョゼさんの使いですか?」
「お分かりになられますか?」
「いや、館にいた皆の顔覚えているからね」
春先まで見るとは思わなかった顔にパウリナは困ったように口角を上げる。俄かに驚いた格好をしているその者達に続けて言う。
「御主人がどうにも拙い状況にいるんですよ、貴方の御主人の御友人も含めて。ちょっと手を貸してもらえます?」
「我等とて、その心算で貴方を訪ねた次第です」
「じゃぁさっさと行きますか。駆け足になりますけど、いいですよね?」
『はっ』
そういうなりパウリナは、アリッサが向かっていった森へと疾駆していく。盗賊らしい軽快な走りで、痩せ馬程度の速さであった。それを追って残りの三者もまた走っていく。蹴り付けた砂が廃屋の柱に被る。
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朝焼けに照らされた針葉樹林の砦は穏やかさに包まれながら、篝火込みであろうとなかろうと、その姿をよりはっきりとさせていく。それぞれの階で高さを確保するためか、中身の割には高さがあり、窓と窓の縦間隔の幅が大きい。それは慧卓の読み通りといってはなんだが、矢張り別荘や屋敷といった印象が拭えぬ建物である。天辺に赤い旗をひらめかすのは彼らの自意識によるものだろうが、自分達が人から憚られる、お尋ね者である事の自覚は無いらしい。
建物の中の賊達は、狩りで仕留めた獲物から肉を剥ぎ、火にくべて食べているようであった。それは勿論彼らのための朝食であり、捕虜のために用意されているわけではない。当然、武器を取り上げられて監禁状態に陥った慧卓にとっても。
「『動くな、糞野郎。爪を全部剥がすぞ』。『なんだって』。『お前ら、変な気を起こすんじゃないぞ』。『ああ、そうですか』」
可笑しな声を伴いながら両手の指で人形劇を愉しむ慧卓に苛立つように、戸の近くに居たユミルはきつめに叱る。
「黙ってくれんか。眠れんだろうっ」
「そんな事言われても、退屈で退屈で仕様が無いんですよ。もう朝飯の時間でしょ?一回叩き起こされたのにそれから音沙汰無しって完璧舐めてますよ」
「それはそんな態度を取るからだ、馬鹿者が」
「・・・貴方達、一体何なんです?何しにきたんです?」
「ああ、貴方の疑問は最もだよ、リコ殿」
同室のリコが半ば呆れを隠せぬ様子である。皆が皆、足にロープを繋がれており、ロープは鉄柱に括られて簡単には解けないものだ。雁字搦め過ぎて全
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