休日の茶会
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ツェル・フォン・ケルトリング元帥など、優秀な軍人を多数輩出した帝国でも有数の武門の名家であり、侯爵の爵位も有している。だが、ケルトリング元帥の二人の息子、長男ヘルマンは帝国歴430年、次男カール・ハインツは432年に戦死し、その妻達は夫の後を追うようにヴァルハラへと旅立った。
ベアトリクスは故ケルトリング元帥の次男カール・ハインツの長男ウィルヘルムとその妻グレーチェンの忘れ形見であり、今年で17才になる。アルブレヒトより三歳年上だ。
何故かアルブレヒトは、休日になるとこの令嬢に呼び出されるのである。又従兄弟という関係にあるが、出会ったのは3年程前である。
今は亡き母親譲りのカラメル色の軽い癖っけのある艶やかな長髪。大きめの鳶色の瞳。十二分に美しい容姿だった。
ベアトリクスはもう結婚も許される年齢である。だが、結婚の話がやって来ないのは後見を務めている伯爵家のお陰であり、ベアトリクスはいずれ当主となってケルトリング侯爵夫人になるのではないか、とアルブレヒトは考えている。マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレのような例を知っているからだ。
ベアトリクスは瞼を閉じた。その裏には過去の光景が浮かぶ。もう、5年も前になるだろうか。最初会った時、ベアトリクスにはアルブレヒトの体が実際の大きさよりも小さく見えた。単に身長のせいではない。彼は何を話していいのか悩み、戸惑い、緊張していて、それが表情と雰囲気に出ていたのだ。小さく見えても仕方がないものであった。アルブレヒトの体は父方の遺伝を強く受けたのか、大柄だった。
沈黙が流れ続ける中、やがて先ほどの執事が御茶菓子と来訪者と主、二人分の紅茶を持ってきた。麗しい貴族の令嬢に毎週呼び出されるとすれば随分と聞こえはいいだろう。だが、二人の関係は出される御茶菓子のようなそんなに甘いものではない。
招かれる側は自分はただの茶飲み相手なのだ、と自分なりにそう解釈している。実際、その解釈に間違いは無いとこれまでの行動を理由として信じている。
アルブレヒトは来る事は欠かさないが、招待者との会話はぶつぶつと、千切りのじゃがいものように途切れてしまう。これまでに誇れるような女性との交際経験も無い彼だから仕方がないかもしれないが、そこを何故だかこの令嬢は飽きなかった。
まともに会話が続かないのでは、呼び出されなくなっても不思議ではない。だからこそ、声がかかる度にアルブレヒトの脳内には疑問符の大群が浮かぶ。最初などお互い黙りこくったままで、名前を名乗った時しか言葉を交わさなかった。
子供のように引っ張り出されて外に出て遊ぶわけでもなく、貴族らしく詩や宝石を片手に談笑するわけでもない。ただ御茶請けと共に紅茶もしくは、たまにではあるがコーヒーを飲んで、本当に少しの会話をして、時間が来たらアルブレヒトが部屋を
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