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HE IS JUST IN LOVE WITH THE BEAT
第二章
[8]
前話
「もう一本」
「今日は二本ですか」
「明日休みだしな」
実際にそうだった、俺はウイスキーは一本が限度で二本も空けると次の日の朝二日酔いだ。けれど明日は実際に休みで朝起きて風呂に入ればそれで酒は何とかなると思って。
俺はもう一本頼んで飲みはじめた、そして女が来たことを自然に喜びながらエイトビートを聴いていると。
女はカクテルを飲みながら俺に言ってきた。
「まだ飲めるかしら」
「だったらどうなんだ?」
俺はあえて女を見ないで女に言葉を返した、お互いに言葉をかけ合ったのははじめてだったが不思議と自然なやり取りだった。
そうして飲みながら女に答えた。
「この一本空けたら明日は二日酔いだ」
「そうなの。けれど飲むのね」
「今日はな」
「それはどうしてかしら」
「あんたを見られたからだよ」
俺は素直に答えた。
「だからだよ」
「そうなの。じゃあ飲みましょう」
「二人でか」
「今夜はね。そして貴方がお店に来た時はね」
「こうしてか」
「いつも飲みたいけれど」
「あんたがそうしたいならな」
俺は本音を隠して言葉を返した。
「そうすればいいさ」
「それじゃあね」
「ああ、それでまずはお互いのことを話すか」
「それから一緒になのね」
「飲むか」
「そうしましょう、私はね」
女は話してくれた、俺もそうした。女は仕事は銀行員だった。たまたま入ったこの店が気に入って毎晩少し飲んでいると答えてくれた。服は私服で自分の好みで会社帰りにトイレで着替えているという。
俺は俺で自分のことを話した、そうしてだった。
俺達は二人で飲んだ、それはこの日で終わりでなく。
次からは携帯で連絡をし合って二人で飲む様になった、店の音楽も楽しんだ。そうして俺達は自然と付き合う様になった。俺達のこの恋愛は酒と音楽から始まった。そこから結婚につながっていくのだから世の中本当に面白いものだと思う。俺達のことは酒とエイトビートからはじまったと思うと。ただ結婚生活は子供主体でどちらもない、今は俺も女もすっかり子煩悩でバーに行くなんて考えもしないことになっている。
HE IS JUST IN LOVE WITH THE BEAT 完
2020・9・2
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