最終章:無限の可能性
第282話「決定的な差」
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いていた。
理力を纏い、“意志”を籠めた渾身の蹴りは、確かに神を仰け反らせた。
「ッ―――!」
「しまッ……!?」
その隙を、帝は逃さない。
「てめぇとの決定的な違いを教えてやらぁ。それは実力じゃねぇ。……いざって時に頼れる、相棒の有無だッ!!」
―――“力を示せ、我が憧憬よ”
帝は神に肉薄し、超至近距離から“固有領域”の力を解き放った。
“意志”を籠め、千載一遇の隙に最大火力を叩き込んだのだ。
「はぁッ、はぁッ、はぁッ……!」
“死闘”を経て、帝も完全に満身創痍だ。
それでも、満足がいったように笑みを浮かべていた。
「―――見事」
「ッ……!」
しかし、神は健在だった。
帝の最大火力を食らってなお、“領域”が砕け切っていなかったのだ。
「くっ……!」
疲弊した体を動かし、構え直す帝。
エアもそんな帝を支えるように並び立つ。
「いい、構える必要はない」
だが、神は構える事なく、自然体のままだった。
「最早俺の敗北は必定だ。“領域”はほぼ砕け、“天使”も全滅だ。加え、お前たちは一人も欠けていない。……勝敗は既に決しているのだよ」
穏やかな笑みと共に、神は言う。
「……貴方は、どうしてイリスについたの」
優奈がかねてよりの疑問を尋ねた。
“死闘の性質”の神は、どちらかと言えば善の神だ。
洗脳も受けておらず、自分の意思でイリスについていた。
レイアーのような嫉妬などもないため、なぜ敵となったのか分からなかったのだ。
「……俺にとっては、善悪など関係なかった。ただ、“死闘”をしたかった」
「それだけ、なのか……?」
「そういう“性質”故な」
ただ戦いたい。だからイリスについた。
いくらその方が強敵と戦えるかもしれないとはいえ、あまりに単純過ぎた。
「だが、勘違いだった」
しかし、それは違うと神は言う。
「お前、名は?」
「……王牙帝だ」
「そうか。……王牙帝、礼を言うぞ。お前のおかげで本当の理由に気づけた」
そう言って、神は豪快に笑みを浮かべる。
「“可能性の性質”の神、その半身よ。お前と似たようなモノだったのだ。……人の、生命の可能性が見たかった。だから敵として立ちはだかったのだ」
「私と、同じ……」
ただ、辿り着いた立ち位置が違っただけの話だった。
優輝はその人間達に寄り添う形で。
神は逆に敵として立ちはだかる形で。
どちらも“可能性”を見たかった、ただそれだけだったのだ。
「行け。これ以上の問答は不要だろう」
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