第一章
[2]次話
森の中で出会って
フランス南部の豊かな自然に囲まれた街にシャルル=ロレーヌと妻のマルゴは住んでいた。二人共定年を迎えたばかりでしかも子供達は独立していて完全に悠々自適の生活に入っている。それで日々穏やかに過ごし。
気楽に料理を作って食べて読書や音楽を楽しんでいた、そして日課に夫婦での散歩をしていた。この時もそうで。
夫婦で街の傍にある森の中にある道を歩いていた、二人共すっかり髪の毛は白くなっているが背筋も足取りもしっかりしている。
その中で夫は妻に言った。
「今日もいい天気だな」
「そうよね」
妻も笑顔で応えた、二人共目の色はグレーだ。二人共白髪だが髪の毛は豊かだ。
「よかったわ」
「本当にな。じゃあ今日はな」
「ええ、いつもよりも歩きましょう」
「歩ける時に歩かないと」
つまり運動しないと、というのだ。
「よくないし」
「だからな」
「今日はいつもより歩くべきね」
「折角の天気だしな」
「森林浴にもなるし」
「そうしていこうな」
こう妻に言って二人で歩いていた、その中で。
「ニャ〜〜〜」
「猫の鳴き声か」
「そうね」
二人はその声に気付いた、それで周りを見回すと。
すぐそこに牛茶色と白の毛の猫がいた、非常に小さく顔立ちもあどけないことから子猫だとわかった。その猫を見てだった。
夫は妻にすぐに言った。
「猫だな」
「そうね、迷子かしら」
「母猫とはぐれたのかもな」
「野良猫ね」
妻は子猫に首輪がないことを確認して言った。
「この子は」
「野良で子猫一匹になったら」
「大変よ」
「そうだな、母猫は」
夫は周りを見回した、すると。
子猫以外に猫はいなかった、そのことを確かめて夫は妻にあらためて言った。
「いないな」
「他の子猫もね」
「完全にはぐれたみたいだな」
「そうね」
「だったら」
それならとだ、妻にさらに言った。
「わし等で引き取るか」
「そうしてね」
「育てるか」
「子供達はもう皆結婚して独立してるし」
「時間もあるしな」
「だったらね」
「わし等の家族にしよう」
こう言うのだった。
「この子もこのままでは生きられないし」
「それじゃあね」
妻も頷いた、こうしてだった。
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