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突然の来訪の理由
第三章

[8]前話
「適えてやるか」
「ええ、赤ちゃん達をね」
「無事に産んでもらうか」
「そうしましょう」
「俺達を頼って来たならな」
「その願いを適えてあげないとね」
 夫婦で話してだった、娘も言った。
「私もね。家族だし」
「よし、じゃあ里親も探すか」
「赤ちゃんが無事に産まれたら」
 夫婦でそうした話もしてだった。
 家族で妊娠がわかったチャオの面倒をさらに見ていった、チャオのお腹は日増しに大きくなり遂にだった。
 三匹の猫を出産した、一匹は黒のトラ毛で雄だったが残り二匹は母猫と同じトラ毛の雌だった。その猫達はそれぞれだった。
 雄猫は夫の従弟の夫婦雌の二匹はそれぞれ妻の二人の妹達の夫婦に里親に出された。雄猫はトラ、雌猫はそれぞれマナとカナと名付けられ。
 それぞれ育ったら出されることになった、だが夫は彼等に優しく言った。
「時々里帰りさせる約束はしたからな」
「安心して次のお家に行ってね」
 妻も猫達に言った。
「チャオもそうよ」
「これからも子供達に会えるからな」
「安心して巣立ってね」
「お前達は離れ離れにならないからな」
 こう言うとだった。チャオは。
 乳を与えている子猫達に言い聞かせる様に一声鳴いた。
「ニャア」
「ナア」
「ニャウ」
「ナ〜〜オ」
 子猫達も応える様に鳴いた、夫はその猫達を見て妻にあらためて言った。
「折角頼ってくれて家族になったしな」
「それならよね」
「その願いに応えないとな」
「そうよね、じゃあこの子達はね」
「これからもずっと家族だ」
「お家は離れるけれど」
 それでもというのだ。
「そのことは変わらないわね」
「ああ、ずっとな」
「それでチャオはね」
「この家にずっといるんだ」
 母猫である彼女はというのだ。
「それで子供達と会うんだ」
「うちで産んだ子達とね」
「チャオもそれでいいな」
「ずっとうちにいて」
「ニャア」
 チャオは二人にも鳴いて応えた、そして学校から帰ってきた中学生の娘が来ると彼女にも鳴いた。玄関にいた猫はもう母親になり家族になっていた。


突然の来訪の理由   完


                  2021・2・21
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