第一章
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犬の恩返し
タイのクラビノに住んでいるオラワン=アッチュランゴは黒髪の明るい顔立ちの中年女性である。夫と共にカレー屋をやっている。
その彼女は日課としていつも犬に餌をやっている、それも一匹や二匹ではなく。
「今日も多いな」
「そうね」
夫のチャワリット、痩せて一七五位の背で黒い目がきらきらとしている彼に対して笑顔で応えて言った。
「犬はね」
「我が国は犬が多いしな」
「野良犬がね」
「あちこちにいてな」
「うちの近所にも多いわね」
「皆犬好きだしな」
タイ人はというのだ。
「だからな」
「皆ご飯あげて大事にするから」
「犬もな」
「普通にあちこちにいるわね」
「野良犬を引き取ってもいいし」
そうして家族にしてもというのだ。
「その辺りおおらかだな」
「それはタイらしいわね」
「マイペンライだな」
夫は笑ってこの言葉も出した。
「そうだな」
「そうそう、犬のこともね」
「そういうことだな」
「ええ、それでね」
「今からだな」
「お店の残りがあるから」
即ち残飯がというのだ。
「これをあげてね」
「ご飯をあげるか」
「あげられるものがあるなら」
それならというのだ。
「やっぱりね」
「あげないとな」
「そう、それじゃあ」
「今からか」
「またあの子達にあげるわ」
近所の犬達にとだ、こう言ってだった。
妻はいつも犬達にご飯をあげる場所に行くと犬達があちこちから集まってきた、そうして彼女があげるご飯を尻尾を振りつつ食べた。
妻はその光景を見て自然と笑顔になった、そして。
一緒にいる夫も笑顔になった、その中でだった。
夫は一匹の白毛であちこちに茶色のブチの模様がある中型の大きさの犬、自分と同じ模様でやや大きな犬と一緒にいるその犬を見て言った。
「ああ、また来てるな」
「トゥアプーね」
「その名前だったか」
「私が名付けたのよ」
妻は夫に笑顔で話した。
「この子は」
「母親と一緒に来てるな」
「ええ、今日もね」
「そっくりだな」
親子でとだ、夫は母親も見て言った。
「本当に」
「そうよね」
「ああ、それでな」
夫はここでそのトゥアプー、母親より小さな雄犬を見た。見れば。
その口には木の葉があった、トゥアプーはその葉を妻の足下に置いた。
「ワン」
「有り難う、貰っておくわね」
「ワン」
妻の言葉に尻尾を振って応えてからだった。
トゥアプーは母親そして他の犬達と共に食事を摂った、夫はその彼を見ながら自然と笑顔になってそうして言った。
「今日もだな」
「ええ、プレゼントしてくれたわね」
「前は紙でな」
「今日は木の葉だったわね」
「いつもご飯を貰ってるからか」
「そ
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