第一章
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猫も二十歳になると
保護猫として池上家に来てもう二十年子猫の時からずっと家にいる。トラ猫の雄であるゴンタはこれまではよく寝ていてもの静かな猫だった。雄猫であるがとても大人しく家族はそのことに有り難く思って一緒に暮らしていた。
だが二十歳になってだった。
「ナ〜〜〜オ、ナ〜〜〜オ!」
「また鳴いてるな」
「そうね」
夫の朗も妻も芳香もそんなゴンタを見て話した。
「最近よく鳴くわね」
「そうだな、健康そうなのにな」
夫は今家の中を歩き回って鳴いているゴンタを見て言った、見れば今も大きな声で鳴いている。毛並みも足取りも確かであり顔立ちといいとても二十歳猫ではもう相当な高齢であることを感じさせない。鳴き声自体も元気がいい。
だがこれまで鳴かなかった猫があまりにも鳴くので夫婦で言うのだった。
「義男も言うしな」
「ええ、ゴンタがどうしたのかってね」
二人の息子のことも話した、夫は大柄で丸眼鏡をかけた長方形の顔だ。しっかりした体格で額が凄し広くなってきている。妻は黒髪のショートヘアで猫目であり目尻に皺がある。二人共もう四十代も半ばを超えている。二人で高校生になる息子の話もした。
「言ってるし」
「ちょっとここはな」
「獣医さんに診てもらうべきね」
「もう歳だからな、ゴンタも」
「そう、やっぱりね」
「それじゃあな」
「明日ちょっと連れて行ってくるわ」
妻は自分から言った、ゴンタは少し鳴いていたが家のソファーの上にジャンプして上がるとそこにあるクッションの上で丸くなって寝はじめた、夫婦でそんな家族の一員を見て話して決めた。
そして実際にだった、妻はゴンタを獣医に診せた、すると獣医はこう言った。
「確かに高齢ですが足腰も内臓も大丈夫です」
「健康ですか」
「健康そのものです」
そう言っていいというのだ。
「本当に、ただやはり高齢ですから」
「だからですか」
「認知症が」
これがというのだ。
「あるかも知れないですね」
「認知症ですか」
「人間も歳を取るとなりますし」
「猫もなるんですね」
「どうしても。犬や他の生きものもですが」
猫以外の生きものもというのだ。
「そうです、ですから」
「この子もですか」
「はい、その可能性があります」
「二十歳ですからね」
言われてみればとだ、妻も言った。
「猫だと本当に高齢ですね」
「ですから」
「認知症もありますか」
「はい、人間も認知症になりますとこれまでと行動が変わりますね」
「そうですね、徘徊したりとか。そういうのはないですが」
「高齢の生きものにはこうしたこともあります」
大声で鳴くこともというのだ。
「ですから」
「だからですか」
「こうしたこともです」
「ある
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