暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
最高の陽だまり《呪い》
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
とマリアさんが何とか食い止めているらしいよ。こういうとき、マリアさんは頼りになるよね」
「うん」

 未来が次々と口にする名前は、響に安らぎを与えてくれた。
 空返事しかできず、響は足を進める。
 先導する未来は、時々響を振り返っては笑いかけていた。
 胸の中に引っかかる何かが、ずっと響の顔を固めていた。
やがて、しばらく歩いた未来は足を止めた(・・・・・)

「未来?」
「……」

 電池が切れた機械のように、未来は動きをやめた。
やがて、ギギギという効果音が似合うようなゆっくりとした動きで、未来は静かに振り向いた。
 そして、その未来の顔を見て、響の顔は凍り付いた。

「シェム・ハ……」
「何を驚いていおる?」

 さきほどまでの陽だまりの黒い瞳ではない。
 瞳孔が赤く(ひか)るそれは、にやりと凶悪な笑みを浮かべた。

「我を屠り、世界を救った英雄よ。何を躊躇っておる?」
「違う……ちが……」
「その呪われた拳で世界を救ったではないか。誇るがいい」
「呪われ……」

 すると、未来はするりと流れるような動きで響の顔に寄る。

「二千年の呪いよりもちっぽけだと誰が決めたと言った刹那、我ごとこの依り代の少女を葬ったのは、傑作だったぞ?」
「ちが……っ!」

裏拳で振り払おうとするが、未来はまるで影のように手ごたえがない。

「何が違う? 世界を救えたのだから、依り代の少女など容易い犠牲だったのではないか?」

 その声は、すぐ耳元からだった。

「違う……っ!」

 振り向きざまの裏拳も、すぐにかわされる。
 そして次は、真正面に気配。

「私は……私はッ……!」

 その時。
 ごごご、と轟音が聞こえた。

「お前の絵空事は虚空へと消えた。呪いの明日はお前を蝕む」
「止めろぉ!」

 無意識のガングニールの起動。
 だが、未来は響の拳をかわし、ケラケラとせせら笑う。
 拳が届かなかった響は、そのまま膝を折った。

「未来は……未来は、私にとって大切な人だよ……それは絶対、間違いなく言えるよ!」
「つまりお前は、大切な人を犠牲にすることを厭わなかった。なんとも英雄的行為ではないか」

 そして、地面を唸るような音が少しずつ大きくなっていく。
 そしてその音源は、どんどん響の足元に近づいてくる。
 そして。

『カラダ……ヨコセ……!』

「うっ……」

 どんどん揺れが大きくなっていく。揺れはやがて、足元から響の体へ直接流れ込んでいく。

「がああああああああああああああああああ!」

 未来(シェム・ハ)の体が、町中の風景がひび割れていく。やがて世界は、あたかもガラス製だったかのように粉々となり、響の世界は、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ