episode12『銀色の鬼』
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ガタガタと、足が震える。
呼吸がままならない、視線が揺れる、真っ白な息が濃くなった。
父を殺し、母を殺し、ヒナミを育んだ大切な居場所を奪い、彼女のすべてを奪い去った炎の魔人。ヒナミにとっての世界の何もかもすべてを燃やし尽くした、最低最悪の怪物。
スルトル・ギガンツ・ムスペル。遥か遠い国の神話の炎の巨人の名を関する、海を越えた世界からやってきた製鉄師。
ヒナミにとっての、恐怖というものの象徴。
「随分と探したぜ、まさかこんなところに逃げ込んでいるとはな」
「なん、で、ここが」
「なかなか見つからなかったがな、お前が漸く顔を出してくれたお陰で見つけられたよ」
彼は背後に控える薄く赤の混じったような薄銀色の髪を持つ魔女の頭をぐしぐしと乱暴に撫でながら、そんな事を言いのける。
魔女はそんなアクションに対して何の反応も返すことなく、無表情のままにされるがままだ。床に向いたその両目のうち片側は視点が定まらず、顔にも随分と大きな火傷跡が残っているように見える。
「顔、を、出した?」
「あの一緒に布団にくるまっていた少年はボーイフレンドか?随分と仲がよさそうだったじゃないか」
「――っ!!」
まさか、あの日。
シンに連れられて天井裏の高台に出たあの時に、見つかったのか。そんな都合よく、たまたまあそこに居たというだけのあのタイミングで見られてしまったなんて、そんな事が。
「俺には良く出来た“眼”を持った仲間が居てなぁ。見逃さなくてくれて助かったよ、危うくイラついて燃やしちまうところだったぜ」
ぱちん、ぱちん、と指を鳴らすのに同期して、彼の周囲の床が先行を放つと同時に爆散する。砕けた地面が赤熱して、破片が辺りに飛び散った。その内のひとつが魔女の少女の頬に当たるも、双方反応を示す様子はない。
やはりだ。
あの魔女の少女もまた、彼に捕らえられ、全てを諦めてしまっている。
絶望という名の病魔に、侵されてしまっている。
「……そうやって、私のことも燃やすつもり、なの?皆、みたいに」
「……ちぃと質問が多いよなぁ、折角の再会だってのによぉ。もっと言うことあるだろうが、ちょっと薄情だとは思わねぇか?なぁ、オイ」
「――ひ、っ」
男の声のトーンが下がる。
恐怖に押されて黙りこくったヒナミに「はぁ」とため息を吐いたスルトルは、打って変わってニタリと笑うと「まあいい」と呟いて、大げさな動作で腕を広げた。
「まぁいい。折角の再会なんだからよぉ、余計なことはナシにしようぜ。漸く俺の悲願に近付くんだ、その記念日にごちゃごちゃと言うってのは――」
ダァンッ!
と、轟音が響く。
男の声を
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