見滝原博物館
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博物館に入るのは、とても久しぶりだった。
「博物館なんて、最後に来たのはいつだったかな……?」
そう呟きながら、ハルトは特別展のエスカレーターを下っていく。
「ハルトさん、ここ来たことあるの?」
後ろにいる響が尋ねる。ハルトは首を振り、
「いや。見滝原は十月に来たのが初めてだし。でも、地元の博物館なら何回か行ったことある……と思う」
「思う?」
「あ……ほら、昔過ぎて忘れたんだよ」
「あー」
響は納得したように頷いた。
「そうだよね。私も引っ越す前に美味しかったお店、もう行ったかどうかも分かんないからなあ」
「響ちゃん、引っ越したことあるの?」
「うん。あ、ハルトさん前」
「え? うおっ!」
エスカレーターの乗り口に躓く。この日、ハルトはもう二度とエスカレーターに乗るときは後ろを向いて話をしないと決心した。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫大丈夫」
赤恥をかいたハルトは、そのまま展示会場の入り口をくぐった。
真っ暗な会場で、放送案内が大きく響いていた。
『ようこそ、『滅の文明特別展』へ! 只今より、皆様を過去の世界へご案内します』
「おおっ! ねえ、ハルトさん! 写真とって写真!」
「いいけど……あれ? 響ちゃん、スマホは?」
「ないよ?」
「ないの?」
「聖杯って、日用品までは持ってきてくれないんだよね。だから、服一式だけしかないんだよ」
「ケチだな聖杯」
「まあ、サーヴァントとしてもう一回生かせてくれたから、贅沢は言っちゃいけないんだけどね。あ、それより」
響は最初の開設パネルのところでVサインをした。
「はいはい。はい、チーズ」
響の写真をあとでコウスケに送る約束をして、ハルトはその解説パネルに視線を移した。
「えっと……ムー大陸か……」
「何大陸?」
「ムー大陸。一万年前に、太平洋にあった大陸らしいよ」
「ほえー」
響がぽかんと口を開けている。
「……君話ついてこれてる?」
「うんうん! 一万年前の大陸! ……ってことは聖遺物いっぱいあるのかな?」
「聖遺物?」
「ううん。こっちの話。でも、この世界にSONGないから、別に気にする必要もないか」
「? まあ、いいや」
ハルトは、通路に従って進んでいく。
最初に会ったのは、大きな模型だった。青い海を表現した台に、大きな島が浮かんでいる。あちらこちらには神殿と思われる建物が作られており、その中央には一際大きな神殿がそびえていた。
『こちらはムー大陸をイメージして作られた模型です。ムー大陸は突然この世から消え去ったと言われています』
「突然大陸が消えたってことなのかな?」
模型の解説を読みながら、響は疑問
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