雪空の噴水
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…!」
「あたしの質問に答えてよ」
さやかはハッキリと言った。
「どうなの? これまで無数のファントムを倒してきた魔法使いさん」
「……」
魔法使い。それが、ハルトのもう一つの姿だった。
絶望した魔力を持つ人間を食い破って出てくる、絶望の権化。それから人々を守るために戦ってきたハルトだが、先日さやかもまた、そのファントムになってしまった。
「私も……倒す?」
さやかの顔に、別のものの影が映る。それは、三つの目がついた騎士甲冑のようにも見える。
そしてそれが、ファントムが人間の姿から怪人体になる前置きだということも、ハルトは理解していた。
「私もファントムだから、同じように倒す?」
「……いいや」
ハルトは小さく首を振った。
「オレは……ファントムを倒すためにじゃなくて、人を守るために戦ってるから。君が誰かを傷つけたり……それこそ、他のファントムと同じように、人を絶望させようとしない限りは、戦わないよ」
「ふうん……」
信じ切れていない。さやかはそんな顔だった。
ほかでもない、ハルト自身も分かっていない。
「まあ、いいや。どっちでも」
さやかはそのまま、ハルトから離れる。
「まあ、そのうちアンタとはひと悶着あるかもね?」
その表情に笑顔を張り付けて、さやかはそのまま公園の出口まで軽いステップで去っていった。
「……ひと悶着、ね……」
ハルトは腰のホルスターから、指輪を取り出す。ルビーが基調とされている指輪。カバーを人差し指で下ろし、それはあたかも顔のように見える。
「……」
もし戦うときになったら、どうすればいいのかな。
そう物思いに耽っていた時。
『やあ。あまり元気そうではないね。ウィザード』
「うおっ!」
突然の声に、ハルトはルビーの指輪を放り投げてしまった。
「うわっ! やばっ!」
左手の平に乗ると、今度はそのままバウンド。今度は右手に。そのまま跳ね返り、結果的にルビーの指輪でお手玉することになってしまった。
『おや? それは君にとって必要不可欠だと思っていたけど。少し見ないうちに、曲芸の道具になったのかい?』
「いきなり話しかけるからだろ!」
思わずムキになってしまった。だが、その相手は他の人には見えていないのか、ハルトに不審な目を向ける人が多数だった。
「あ……」
ばつの悪い顔を浮かべながら、ハルトは声を___それを声と呼ぶのなら___かけてきたものへ目を落とした。
「……何の用だ、キュゥべえ」
『何か用事がなければ、君に会いに来てはいけないのかい?』
鼓膜ではなく、直接脳に届けられる声。キ
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