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幻の月は空に輝く
日向の自己主張は白眼だ
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のかな。
「手に馴染むものがいい。これだと今の俺の手には大きい」
「まぁなぁ…。手に馴染むっつーと……ラン」
「ん?」
 何? 突然呼ばれたけど珍しい。
 壁に寄りかからせてた身体を起こし、父さんの隣まで歩いていく。
「お前の打ってるクナイを見せてやれ」
「別にいいけど」
 本当に珍しいな。父さんがそんな事言うなんて。
 そんな珍しい行動を父さんにさせた珍客をここで初めて見てみれば…。

「(噂をすれば影…)」

 私が飛び込むんじゃなくて、相手から飛び込んできたと驚いたらいいのかどうなのか。私が原因でフラグが乱雑するんじゃなくて、父さんが腕の良い鍛冶屋だから勝手に寄って来るんだろうなとここで再確認。
 忍にとって武器は命だし。
 命運をわける時もある。
 そんなわけで、腕利きの鍛冶職人の父さんの下には、名うての忍が訪れたりするんだよね。
「コイツが?」
 っと、飛びかけた思考を引き戻すように、私の前には不機嫌を隠しもせずに表情を顰めさえ、尚且つ声も低くして私を睨み付ける子供が一人。
 そうか。日向の自己主張は目だ。
 うちはと違って、日向ですと言わんばかりの自己主張は白眼だ。ここであっさりと先日の疑問が解決したんだけど、新しい疑問がわき上がる。
 ネジが何故ここにいる。
 脳裏に沢山のはてなマークが浮かぶが、目の前のネジはそんな私に怪訝な眼差しを向けたまま、鼻先で笑った。
 何だろうなぁ。
 その反応。すっごくデジャブだねぇ。なんていうかうちはの某弟君と反応がまったく同じなんだけど気のせいかな。

「こんなガキに打てるのか?」
 やっぱり似てる。天才と呼ばれる人間はどこかしら似る所があるのだろうか。
 心底思いながら、私はチラリ、と父さんの方を見てみる。別にクナイを見せる分には全然構わないんだけど、見せた方がいい?という確認の意味も込めてね。
 すると父さんは、一度だけ軽く頷いた。
 あぁ、見せるんだね。

「見る気があるなら、付いてくればいい」
 ふわりっと腰に巻いてある布を風に靡かせて、私はネジの問いには答えないまま背を向ける。
 興味があるなら付いてくればいいし、無駄だと思うなら帰ればいい。
 答えない代わりに態度で表してみた。

「流石ハニーの子。クールな感じが似てるよなぁ」
 後ろの方で父さんがしみじみと呟いてる。
 父さん相変わらずだね。流石にネジが引くんじゃないかなってチラリと様子を確認したら、案の定引いてた。
 何だこいつと言わんばかりの目線で父さんを見てるんだけど、その気持ちはよっく分かるよー。
「チッ」
 その後忌々しげな舌打ちが聞こえたんだけど、直後に続く足音からどうやら付いてくる事にしたらしい。
「本当にあるんだろうな」
「さぁ」
「……」

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