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夜刀神
第二章
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 彼に率いられ夜刀神達と戦った、蛇の姿をした彼等は数も多く厄介であった。だが麻多智は率いる者達を勇敢かつ冷静に率いてだった。
 武器を巧みに使わせ足元から来る彼等を一匹一匹確実に剣や鉾で仕留めさせ弓矢で射らせた。そうしてだった。
 葦原から徐々?追い出していき山にまで追い払った、そうしてその山の入り口の堀に杖を立ててそこに印を示して言った。
「この先の山は神、夜刀神の地とし後の葦原は田とし人の地とする」
「そうされますか」
「その様にされますか」
「これより」
「そして社を置いて私がその宮司となり祟りが必ず起こらない様にする」
 ただ祓っただけでなくというのだ。
「そうする」
「左様ですか、ではですな」
「もう祟りはありませぬな」
「何があろうとも」
「そうなる、では葦原を田にしていこう」
 こう言ってだった、麻多智は夜刀神達を山に追い払いそこに印で閉じ込めて祟りは社と自身の奉職で抑えてだった。
 葦原を開墾させた、神職は彼の子孫が代々仕えて続けていった。これで夜刀神の話は終わったと思われた。
 だがそれで話は終わらず継体帝から百年程経ち孝徳帝の御代にこの辺りの谷に堤を築くことになった、だがこの谷がだった。
「あの夜刀神がですか」
「どうもおるとのことだ」
 壬生連麻呂、堤を築くことを命じられた彼にこの時実質的に国を動かしていた中大兄皇子後に天智帝となられる方が話をされた。若々しく整ったお顔立ちであられ英気に満ちた風である。長身で引き締まったお身体をしておられる。
「そこにな、だからな」
「まずはですか」
「そなたには夜刀神を何とかしてもらいたい」
 連麻呂のその濃い顎鬚のある顔を見つつ言われた、見れば彼はかなり大柄で武辺を思わせる姿かたちである。
「よいか」
「それでは」
 連麻呂は皇子のお言葉に実直な声で頷いた、そして常陸に赴いてだった。
 谷のところに行くと夜刀神が大勢出て来た、その数はまるで谷全体を覆わんばかりだった。その数に連麻呂が率いていた兵達は怯んだが。
 連麻呂はその兵達に強い声で言った。
「案ずることはない、我等は剣も鉾も弓矢も持っていて鎧と兜で身を包んでいる」
「夜刀神の牙は通じない」
「そうなのですね」
「そして祟りも封じられている」
 百年前の麻多智によってというのだ。
「何も案ずることはない、我等は民の為堤を築く。そこに何の悪がある」
「ありませぬ」
「それは」
「左様、しかもこれは帝のお考えであられる」
 次にこのことを話した。
「何処に悪がある、天照大神の子孫であられる帝に従わぬ神はどういった神か」
「邪な神である」
「そうした神ならですか」
「憚り恐れることはない、帝の命に従い全て殺してしまうのだ」
 こう兵達に命じた、すると。
 夜刀神達
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