第二章
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「そうしてくれるか」
「それでは」
「ああ、それでお前さん名前は何ていう」
「お磯っていいます」
「お磯さんか」
「はい、生まれて十五になります」
「十五年か、まあ人としては年頃だな」
嫁に入るそれにというのだ。
「ならな」
「はい、では」
「今から家に来てくれるか」
「それでは」
女は吾六の言葉に笑顔で応えた、こうしてだった。
吾六は嫁を貰った、お磯は奇麗なだけでなく吾六に負けないまでに働き者で家事だけでなく機織りもした。
それで家計はみるみるうちによくなり親孝行もよくしてくれた。それで吾六の親達もこう言ったのだった。
「いい嫁を貰ってくれたな」
「全くだよ」
「急に来たがな」
「本当にいい嫁だね」
「気立てはよくて器量もよし」
「働き者でしかも料理もいい」
「非の打ちどころのない嫁だよ」
こう言うのだった。
「特に汁ものが美味いな」
「そうだよね」
「あの汁ものが飲めるとなるとな」
「本当にいいよ」
「そうだよな、しかし」
吾六は親達の話を聞いてここでだった。
首を傾げさせて親達に話した。
「汁ものの作り方はな」
「ああ、それな」
「そのことだね」
「誰にも教えないんだな」
「私が手伝うって言ってもね」
母が言ってきた。
「自分がやるって言ってね」
「それでか」
「作り方は教えてくれないんだよ」
「そうなんだな」
「作るところもね」
そこもというのだ。
「見せてくれないんだよ」
「誰にもか」
「教えてくれなくて」
そしてというのだ。
「見せてもね」
「おかしな話だな」
「そうだよね」
「汁ものを作ることはな」
それはというのだ。
「別にだろ」
「そんな隠す様なことじゃないよね」
「ああ、どうしてなんだ」
このことを言うのだった。
「一体」
「そのことがわからないね」
「全くだ」
吾六は母の言葉に頷いた、だが見るなとか手伝わなくていいとか言われるとだ。
真面目でしかも優しい吾六はお磯に全てを任せた、そうしてだった。
女房の作る汁ものを楽しんだ、そんな中でだった。
たまたま漁が早く終わって家に帰った時にだった、厨房にある酒を取ろうとした時にそこにお磯がいてだった。
小便をしていた、しかもその小便をしている場所は。
鍋だった、それで吾六は言った。
「そういうことか」
「それはその」
「お前は蛤から出て来たな」
彼女との出会いの話をした。
「そうだったな」
「はい、実は」
お磯は項垂れて亭主に答えた。
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