第1部
ポルトガ〜バハラタ
バハラタ東の洞窟
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「……」
「私じゃあ解決できないかもしれないけど、誰かにちょっと悩みを話すだけでも気持ちが楽になることって、結構あると思うよ?」
私なんか実家にいたときしょっちゅうエマやお母さんに愚痴を溢してたし、とおどけながら言う。
「……本当にいいの?」
すると、今まで沈黙していたシーラの口が開いた。
「あたし、今まで人に悩みを打ち明けたことってほとんどなくてさ。どうやって話したらいいのか、本当にこんな話を人にしていいのか、迷惑にならないかとか考えてたんだ」
シーラの言葉は衝撃的だった。天真爛漫で誰とでもすぐ打ち解けられるような子が、こんな風に悩むなんて思っても見なかった。
「迷惑とか、考えないで。私はシーラのこと、もっと知りたい」
きっぱりと、そう私は言い放つと、シーラは吹っ切れたような表情になった。
「……じゃあ、聞いてもらってもいい?」
「もちろん!」
私が肯定すると、シーラは安堵したように話を切り出した。
「あたしね、昔から弟と比べて出来も悪かったし、愛想もない可愛げない子供だったからか、いつも一人だったの」
「ええっ!? 嘘!?」
私は思わず驚愕した。今のシーラからは全く想像もつかない。
そんな私の反応を尻目に、暗い表情で俯きながらも、ぽつぽつと語り始めるシーラ。
「お父さんが偉い人でね。自分に厳しかったから、私たち子供にも甘やかすことはしなかったんだ。それがイヤでさ、あたしが十二のときに家出したの」
「家出……」
十二歳なんて、まだ武術の腕も未熟で、一日中師匠に怒られてばっかりのときだ。
「相談する相手とかは、いなかったの?」
そう尋ねると、彼女は静かに頷く。
「周りは皆大人ばっかりで、あたしのちっぽけな悩みなんか聞くどころか、相手にもしなかったよ。お母さんもお父さんの言いなりだったし。でも今振り返ると、本当に些細な悩みだったのかもね」
「それなら私なんか、いつもルカにイタズラばっかりされて、その度にお母さんに愚痴を聞いてもらっていたよ。それこそなんて下らないことで悩んでいたんだろうって今なら思うよ」
家事や子育てで忙しい中、お母さんは私の話に耳を傾けてくれた。呆れたり、厳しい言葉も返ってきたけど、無視したり怒ったりすることはけしてなかった。
「でも、シーラは一人で家出をしたの? 心細くはなかった?」
「ううん。そのときは色んな『しがらみ』から抜け出せて、やったー!って思ってたよ」
すごいなあ。私だったら一人で家を出るなんて、寂しすぎて耐えられない。
「いろいろ転々として、やっと落ち着いたのがアッサラームだったの。そこでアルヴィスと出会ったんだ」
「そうなんだ。じゃあ、同居人って……」
「住むあてのないあたしを理由も聞かず家にいれてくれたの。アルヴィスってば、昔っからそ
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