第1部
ポルトガ〜バハラタ
バハラタ東の洞窟
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いじゃないぜ」
そんな話はどうでもいい、という態度で私はカンダタを睨み付ける。
「ああ、怖い怖い。でもな、嬢ちゃんがここに連れてこられたってことはな、もう自由はない。おれの所有物になったってことだ。……つまりお前らは、奴隷商人に売るための大事な商品なんだよ!」
そう言って、下卑た笑いを響かせながら、少しでも反抗すれば今にも手を振り下ろさんばかりの殺気を放ち、こちらを見下ろすカンダタ。
「明日の夕方、奴隷商人がお前たちを買いにやって来る。それまでは変な気を起こさず、おとなしくしてるんだな!」
だめだ、ここで下手に抵抗したら、すぐに目をつけられる。だが幸い、変装しているからか私たちのことは気づかれていない。
私は今にも噴き出そうなくらいの怒りを必死に押さえつけ、カンダタの威圧に怯える普通の女の子を演じることにした。
「ご、ごめんなさい……。おとなしくしますから許してください」
先程とは一転、か細い声で伏し目がちに許しを乞う(ふりをする)私。隣にいたシーラも、赤く腫らした目を潤ませ、さらに怯えるポーズをとる。
「へっ。そんだけ可愛げがありゃあ、すぐ買い手がつくぜ。安心しな」
そう言うと、カンダタは踵を返し、牢屋の入り口で待っていた子分と共にその場から出ていった。
足音が聞こえなくなり、完全に気配がなくなったと確認したと同時に、私はげんなりとため息をついた。
「はぁ。まさかとは思ってたけど、やっぱりカンダタだったんだね」
「そーだね。全然懲りないね、アイツ」
シーラも呆れたように答える。そして私たちはお互い顔を見合わせ、堪えきれず吹き出した。
「ミオちんの演技、上手だったね」
「シーラこそ、ホントにカンダタに怯えてたのかと思ったよ」
誰が近くにいるかわからないので、見つからないよう口を押さえて二人してクスクス笑う。
最初は私一人が囮になる予定ではあったが、こんな暗くて狭いところに一人でいたら心細くて辛かったと思う。シーラがいてくれて本当によかったと心から感謝した。
「とりあえず、ユウリたちが来てくれるまで待つしかないよね。寒いから二人でこの布にくるまってようか」
私は近くに無造作に置いてあるボロボロの布を全て拾うと、一端を自分の肩に、もう一端をシーラの肩にかけた。
「ありがとう、ミオちん」
「……?」
俯きながら、小さな声でお礼をいうシーラ。格好もそうだけど、今日はいつになくしおらしく見えるのは、拐われただけが理由だとは思えない。私は意を決して聞いてみた。
「ねえ、シーラ。言いたくなかったら別にいいんだけどさ、何か思い悩んでることある?」
「え?」
「砂漠に行ったときから気になってたんだけど、シーラは何でもないって言ってたじゃない? でもさ、最近のシーラ、ちょっと無理してるように見えるんだ」
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