第1部
ポルトガ〜バハラタ
バハラタ東の洞窟
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がかかるかも」
どうやら、ものすごいスピードで馬車は走っていたらしい。いくら足がつかないためとはいえ、乗っている人には地獄のような状況だったという。
それでも私が起きなかったのは、よっぽど強い薬だったのか、私が鈍いだけだったのか定かではないが、そのせいでシーラに余計な心配をかけてしまったらしい。
「ミオちん、体とか痛くない?」
「うん。全然平気だよ」
私がガッツポーズをとると、シーラは安心したのか、ようやく笑みをこぼした。
とりあえず、私は現状を把握することにした。
明かりとりの窓からは月の光が差し込んでいるので、夜にしては明るい。だが、狭い洞窟の中は、肩を寄せ合わなければ震えてしまうほどの寒さだった。
牢屋の中には布団用なのか薄い布が数枚、隅の方には用を足すための穴があるだけで、お世辞にも環境が良いとはいえない。
食事は私が寝てる間に来たと言うが、シーラは警戒していたのか口をつけなかったようだ。
ああ、そういえば、お昼も食べ損ねたんだった。そもそもポルトガから今まで、まともな食事も取れていない。
こうなったらその辺に生えている草でもミミズでも食べるしかない、そう心の中で決意表明をしたときだった。
「やっとお目覚めか、お嬢ちゃんたち」
低く、ねちりとした声。その聞き覚えのある声に、反射的に顔を上げる。大きな影が鉄格子の前で止まり、その姿が月の光に照らされて露になったその瞬間、私たちは硬直した。
「おれはカンダタ。ま、短い間のつきあいだが、よろしくな」
現れたのは、以前シャンパーニの塔で対峙した、盗賊のカンダタだった。
彼のその言葉にどんな意味が込められているのか、本人を前にしてもそれはきっと誰にもわからない。なぜなら、そいつは目だけが見える覆面を被っており、表情は一切わからないからだ。
おまけに寒い夜にも関わらず、上半身裸のままなのは、その格好がこの男のポリシーなのかと突っ込みたくなる。
そんな半分冗談みたいな出で立ちだが、以前彼に戦いを挑んだとき、私は手も足も出なかった。攻撃を受け、とどめを刺されそうになったとき、運良くユウリに助けられ、彼の一撃によりカンダタから金の冠を取り返すことに成功したのだ。
そのあと彼は逃亡し、行方知れずとなっていたのだが、ここにいるということは、どうやらここでも人身売買を始めていたらしい。
ノルドさんがいっていた黒ずくめの旅の一座というのは、きっとカンダタとその子分のことだったのだろう。
わざわざ変装までして他の国で人身売買を続けるなんて、人として許せない。
「短い間の付き合いって、どういうこと? 私たちをさらって、一体どうする気なの!?」
私は頭に血がのぼってつい、カンダタに尋ねてしまった。
「ほう、威勢がいいな、嬢ちゃん。そういう女は嫌
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