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渦巻く滄海 紅き空 【下】
四十四 視界不良戦線
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ャッと水に化した。

「水分身か」

感嘆めいた声を零し、角都は水を蹴る。
【水遁・水龍弾の術】に注意を向けさせた上での不意打ちを仕掛けたかと思ったが、それもフェイク。
水分身に襲わせ、本体は首切り包丁で音もなく背後から迫りくる。

三段構えの攻撃に、再不斬から距離を取りながら、角都はなるほど、と頷いた。


「そういえばお前は” 無音殺人術(サイレントキリング)”の使い手だったな」


火の国一帯では既に霧が立ち込めている。
視界が悪く、更に足元には一面の水。

足場が水だとどうしても足音だけでなく水音もするのに、それすら微塵も立てずに忍び寄った再不斬に舌を巻く。

初っ端の大技も、自分に有利なフィールドに置き換えるのが目的だったか、と推察した角都は興味深そうな瞳で、再不斬を見据えた。


「流石、高額の賞金首だけはある。その首、なんとしても金にしてやるぞ」
「できるもんならやってみろ!!」


角都の触手が一斉に再不斬目掛けて襲い掛かる。水を蹴り、空中で体勢を整えながら、再不斬は首切り包丁を構えた。次から次へと迫りくる触手を断ち切る。
不意に、触手が足首に巻き付いた。その機を逃さず、角都は再不斬を水面へ叩きつける。


「ぐ…ッ」

水飛沫が上がる。
強かに水面へ墜落した再不斬へ、角都はすぐさま駆け寄ると、足を思いっきり振り落とす。

その寸前、再不斬は顔を横へ傾けた。
角都の蹴りから逃れた再不斬が仰向けのまま、印を結ぶ。

術が来る、と距離を取った角都は、不意に自分の動きが鈍いことに気が付いた。
だがそれよりも次に来るべき攻撃を防がねば、と身構えた角都の足元から、水が人の形となって駆け寄ってくる。


「水分身か…!」

両隣から襲い掛かる再不斬の水分身。
それを切り離した腕で止める。
触手を伸ばし、切り離した腕が二体の水分身を取り押さえたその瞬間、目の前に三人目の再不斬が急接近していた。




「【水牢の術】!!」
「な…!?」

逆巻く水の球体が、角都を包み込む。
両腕を水分身を止めるのに使っている今、角都はなすすべなく、水の牢に閉じ込められた。

動きを封じられ、身じろぎできなくなった角都は内部から抉じ開けようとチャクラを拳に込める。
【土遁・土矛】。皮膚を硬化した拳で粉砕しようとした角都は、歯ごたえのなさに眉を顰める。

水でできた球体の中に敵を閉じ込める【水牢の術】。
一度閉じ込められれば、内側から破るのは困難だが、今の手ごたえは逆に妙だ。
弾力があるかのような感触に、角都は顔を顰める。


「これは…まさか、」
「気づいたか」

水の牢の外で、水球に手を翳しながら、再不斬はにやっと口許に弧を描く。


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