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毛の色は違っても
第一章

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                毛の色は違っても
 神谷裕子、茶色のショートヘアで大きなぱっちりとした目で一五程の背で均整の取れたスタイルの彼女は今二十五歳だ。大学院まで出て今はOLをしているが。
 家で母の由美奈、自分をそのまま初老にして茶色の髪の毛を後ろで束ねている彼女に溜息混じりに言った。
「もう大変よ」
「お仕事に慣れてないの?」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「本当にね」
「やっぱり最初はね」
「大変なものなのね」
「慣れていないとね」
「そうなのね」
「ええ、だからね」
「今は我慢の時なのね」
 母に対して問うた。
「そうなのね」
「そう、だからね」
「今はなのね」
「我慢して」
 そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「お仕事頑張って」
「そしてね」
「やっていったらいいのね」
「そのうち慣れてね」
「楽になるのね」
「何でも最初は大変よ」
 娘に励ます声で告げた。
「だからね」
「それでなのね」
「今は堪えてね」
「堪え時ってことね」
「そういうことよ。お父さんもお母さんもね」
 母は娘にしっかりした声で話した。
「というか誰だってね」
「こんな時期あるのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「今はね」
「堪えて」
「そうしていってね」
 こう娘に言って娘もだった。
 母の言葉にその通りと頷いて仕事を頑張ることにした、勤務している八条教育出版は教科書や参考書を扱っている会社であり彼女は国文学科で修士までなっていたので。
 その経験から現国や古典を受け持っていたが学問を行うのと教科書や参考書を作るのとではまた違い。
 苦労していた、だが母に言われた通りに頑張り日々を過ごしていたが。
 休日家のリビングでテレビを観ているとだった。
「ニャ〜〜〜」
「!?」
 不意に猫の声がした、そうしてだった。
 猫の声がした家の庭の方を見ると菫の花の傍に一匹の白い子猫がちょこんと座っていた。その猫を見てだった。
 裕子は驚いて母そして父の裕之、長方形の顔で頬がこけていて小さな丸い目を持ち額が広く一八五の筋肉質の身体で工事現場の監督をしている彼に言った。
「お父さんお母さん、あの猫」
「えっ、まさか」
「スミレ!?」
 両親もその猫を見て驚きの声をあげた。
「毛色は違うけれど」
「まさか」
「スミレじゃないかしら」
「そっくりだな」
「そうよね」
 裕子はリビングにある猫の写真を見た、そこには。
 茶色の毛で下は八割れで白くなっている猫がいた、裕子が子供の頃拾って来てから十四年飼って天寿を全うした雌猫だ。
 その猫は白猫だ、しかし。
 顔立ちや雰囲気、そして声がそっくりでだ、裕子は両親に言った。
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