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魔法少女リリカルなのは〜無限の可能性〜
最終章:無限の可能性
第276話「水面に舞う緋き月・後」
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超高速で緋雪は駆けだす。
 触手を、極光を躱しながらもそこかしこに魔法陣の起点を刻んでいく。
 無論、神に気取られないように、何度も肉薄して近接戦も仕掛ける。

「ぐっ……!!」

 魔法陣の起点を粗方仕掛けた直後、触手を捌き切れずに防ぐ事になる。
 上空へと弾かれ、一瞬無防備になる。
 ……が、緋雪は不敵に嗤う。

「あはっ!」

   ―――“破綻せよ、理よ(ツェアシュテールング)

 魔法陣が起動し、そこから血の棘が飛び出す。
 それは余りにも大きく、四方八方から神は串刺しになる。
 内、ほとんどは障壁や触手に阻まれたが、それでも動きは止めた。
 そこを、“破壊の瞳”で狙い撃った。

縺舌♂縺(ぐぉお)!?」

「あははははははは!!」

 “破壊の瞳”による爆発のため、神は怯む。
 その隙を当然ながら逃すはずもない。
 緋雪は一気に猛攻を仕掛ける。

「無駄!無駄!無駄だよ!!」

縺ェ繝??ヲ窶ヲ(なッ……)!?」

 耳障りな音と共に、音波のようなモノが結界内に響き渡る。
 それは、以前の戦いで“狂気”に呑まれた緋雪を倒した技だった。
 制御の出来ない“狂気”に堕ちた者の“領域”を強制的に砕く、所謂即死技。
 明らかに“狂気”に満ちている緋雪には、効果抜群のはずだった。

「あはは!あっははははは!!」

 そう。今の緋雪は“狂気”に満ちている。
 笑いながら神の触手を斬り刻み、攻撃を転移で躱して即座に反撃を繰り出す。
 理知的な立ち回りを取っているが、“狂気の性質”から視れば明らかに“狂気”に満ちている。……そのはずなのだ。

「もうその“性質”は効かないよ!……我が心は水面のように……如何に“狂気”に堕ちようと、今この場ではそれでも揺らがない!」

 だというのに、緋雪は狂気に堕ちていながら正気だった。

「(狂気と正気の境界。そこに落ち着く事で、狂気すらも正気として扱う。……お兄ちゃんが武の極致に至るなら、私は狂気と正気の極致へ至る!)」

 緋雪が出した“答え”がこれだ。
 かつて優輝が導王流の極致に覚醒したのを参考に、緋雪は別のアプローチをした。
 敢えて自ら“狂気”へ歩み寄り、“狂気”を理解したのだ。
 結果、狂気と正気の境界線に立ち、“狂気”に堕ちても正気でいられた。
 術式などを用いない“意志”によるモノなので、それが瓦解する時は一瞬だろう。
 だが、自らの心を映し出すこの結界内ならば、その安定性も確実なモノとなる。

「(―――楽しい)」

 大剣を振るう。
 その度に、神の放つ極光や、触手が切り裂かれる。

「(―――楽しい!)」

 緋雪の瞳が爛々と輝き、表情は口角が上がり、満面の笑みとなっ
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