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魔法少女リリカルなのは〜無限の可能性〜
最終章:無限の可能性
第276話「水面に舞う緋き月・後」
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 普段であれば、意識すれば気持ち悪さを無視できるだろう。
 だが、“性質”が原因でそれを避ける事が出来ない。

「(視界に入れないように……!)」

 そこで、敢えて懐に飛び込む。
 そして目を瞑り、気配だけで挑みかかる。
 
「ッ……!」

 冒涜的な触手が振るわれる。
 だが、物理的な攻撃など、今の緋雪には無意味だ。
 超人的な聴覚と、達人にすら追随出来る身体能力。
 その二つさえあれば、空間を掻き分ける音のみでどう来るのか分かる。

「シッ!!」

 体を反らし、屈み、軽く跳躍し、躱す。
 さらには、置き土産とばかりに魔力の刃で触手を断ち切る。

逕倥>(甘い)

「がっ……!?」

 だが、途端に緋雪は動きを鈍らせ、触手が直撃する。
 さらに追撃の極光も食らい、一度倒れ伏した。

「(そんな、甘くいくわけ、ないよね……)」

 聴覚便りになるのならば、その聴覚を利用して“狂気”を流し込めばいい。
 “性質”とは、そういうモノだった。
 どの道、五感の内どれかで“狂気”を流し込んでくるのだ。

「(視覚、聴覚……と来れば、嗅覚とかでも同じ事だろうね)」

 先ほど、緋雪が動きを鈍らせたのは神が発した超音波が原因だ。
 頭を狂わせるかのような音に、緋雪は怯んでしまっていた。
 さらには、聞き続ければ正気が削られる事もすぐに理解できた。
 そのため、緋雪はすぐさま離れようと動きを止めてしまったのだ。

「(いっそ、全部コワせば……―――)」

 掌に“破壊の瞳”を出現させる。
 そこまで来て、緋雪はハッとする。

「(今、何を考えた……!?まさか……!)」

 ズキズキと頭痛が響く。
 “意志”ですらそれを振り払う事は出来ず、気持ち悪さを助長させる。
 さらには、思考にまで“狂気”が侵食してくる。
 まるで、かつて狂気を患っていた時のような、そんな思考になる。

「くっ……!」

   ―――“破綻せよ、理よ(ツェアシュテールング)

 出現させていた“破壊の瞳”を握り潰し、目の前の空間を爆破させる。

「(もう侵食されてる……!このままだと……!)」

 空間断裂を引き起こす事で、追撃の極光を防ぐ。
 だが、一時凌ぎだ。
 すぐにその場から転移で逃げ、先ほどと同じように駆ける。
 だが、先ほどまでの精彩さはなくなっていた。

「っづ……!?」

 極光が足に命中する。
 直撃を避けたとはいえ、それだけで足が消し飛んだ。
 すぐに再生させるが、ジリジリと正気を削られた感覚が緋雪の心を蝕む。

「(呆れた……!私だけ克服したからって、甘く見てた!もっとその先の先を想定して、いくつも対策を立てておけば……!)
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