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優しい人と一緒になれて
第二章

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「そもそも自分より力や立場が弱い相手をいじめるなんてな」
「最低よね」
「そんなことする位なら己を鍛えろ」
 パイロット課程は命懸けで多忙だ、その時に身を以て知ったことだ。
「少しでも時間があるならな」
「そして勉強よね」
「さもないとパイロットになれるか」
 やはりパイロットだったことから言う。
「絶対にな」
「そうよね」
「それでこの猫はか」
「ちなみに女の子よ」
「そうか、お前が飼うな」
「そうするわね」
「わかった、なら飼え」
 やはりにこりともせず言う。
「俺は今から素振りだ」
「剣道のね」
「居合だ、剣道もするがな」
「今度八段受けるのよね」
「居合は七段だ」
 そちらを受けるというのだ。
「そうするからな」
「素振りの稽古ね」
「それをする」 
 こう言って席を立ってだった、夫は家の庭で木刀を居合のそれも剣道のそれも数百本ずつ振った。妻はその間猫にナナと名付けてだった。 
 ご飯や水をあげたりしはじめた、だが。
 ナナはこの日は彼女に近寄らずご飯も水もこっそりと食べた、そうした状況が一ヶ月続き夫は妻に言った。
「懐かないな」
「やっぱりいじめられていたからね」
「人を警戒しているか」
「そうみたいね」
「酷い環境にあれば人間もこうなる」
「シャ〜〜〜・・・・・・」
 部屋の隅にいて自分達を威嚇しているナナを見て言った。
「当然のことだ」
「そうよね」
「少しずつ馴れていく筈だ」
「私もそう思うわ」
「だから辛抱強く飼え、一度飼うと決めたならな」
「最後までよね」
「飼え、絶対に捨てたりするな」
 妻にこのことも言った。
「お前は絶対にしないがな」
「それでもよね」
「そうだ、毎日ご飯と水をあげてだ」
 そしてというのだ。
「飼え」
「そうするわね」
「何があってもな」
 猫を見て強い声で言った、そしてまた剣道と居合の稽古に励むのだった。
 夫は仕事がない時は剣道か居合であり妻は猫の世話をしていた、二ヶ月もすると少しずつ彼女に近付いてきた。そうして。
 半年経つとすっかり彼女に懐いていた、夫はナナを自分の傍に置いている妻を見てにこりともしないがそれでも言った。
「すっかり懐いたな」
「ええ、やっとね」
「半年か。長いか」
「どうかしらね」
 それはわからないという返事だった。
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