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醜悪な一族
第四章

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「取ろうとしているな」
「それでもうね」
「文字通り骨肉の争いしてるな」
「毎日誰かと誰かが言い合って」
 そうしてというのだ。
「殴り合いにもね」
「なっているな」
「かなり酷いらしいわよ」
「僕も聞いてるよ、特に」
 夫はテーブルにいる、そこに自分で妻が作ってくれた夕ご飯を出しながら話した。
「あの二人はな」
「ええ、米介さんは総会屋の仕事で酷いことして」
「遂に刺されたな」
「遺産争いでも特に酷くて」
 それでだったのだ。
「そっちでも恨まれていてな」
「元々凄く嫌われていて」
「刺されて死んだがな」
「誰もお葬式に行かなかったわね」
「うちもな、奥さんと子供にも愛想を尽かされて出て行かれていてな」
「誰もご遺体引き取らなくて」
 実は葬式そして通夜も病院が簡単にやっただけだ。
「無縁仏になったわね」
「ああ、刺されて痛さに泣き叫びながら死んでな」
「酷い終わり方ね」
「そして興毅もな」 
 保健所で働いていた彼もというのだ。
「あいつも特に遺産で醜く取ろうとしてな」
「マンションの権利書貰った人のお家に夜忍び込んで取ろうとして」
「見付かって慌てて逃げようと窓から落ちてな」
「窓から落ちてね」
「死んだな」
「そうなったわね」
「はっきり言って屑だった」 
 夫は二人についてこう言い切った。
「本当にな、命は何とも思わないで金とか土地ばかりに夢中で」
「醜い人達だったわね」
「他の連中もな、あんな醜い姿晒して必死になるより」
 金や土地等にというのだ。
「こうして平和に暮らした方が絶対にいいのにな」
「私もそう思うわ」
「そうだな、じゃあご飯食べたらな」
 夫は晩ご飯を食べながら向かい側の席で今は冷蔵庫から出したプリンを食べている妻に対して言った。
「犬達の散歩行ってくるな」
「もう夕方私となつみで言ったわよ」
 妻の返事はあっさりしたものだった。
「朝もね」
「何だ、もう行ったのか」
「いつもそうでしょ」
「仕方ないな、じゃあご飯はあげるな」
 夫は妻に残念そうに返した。
「そっちはまだだよな」
「ええ、まだよ」
「じゃああげるな」
「ワン」
 夫がこう言うとだった、家の中にいる犬達の中からブンコが鳴いた、彼女は他の犬達と共にテレビを観ているなつみの傍に集まっていたが。
 ご飯を聞いて嬉しそうに鳴いた、すると他の犬達も父を期待の目で見てきた。父はそんな彼等を見て笑顔になった。そしてもう親戚達のことはどうでもいいと思った。自分と家族は既に金や土地等よりも遥かに素晴らしい幸せを持っているので。


醜悪な一族   完


                2021・1・20
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