暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第四話 魅惑の妖精
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を浮かべたルイズだったが、第二位という言葉にハッと我に帰ると、ある少女に顔を向ける。そこには、胸を強調するように腕を組んだジェシカが同じように視線をルイズに向けた。自分に向けられる視線に気付き、ジェシカがニヤリとした笑みを向けると、それに合わせたかのようにスカロンの声が響いた。

「そして第一位は! わたしの不肖の娘! ジェシカ! 二百八十六エキュー二十七スゥ、三ドニエ!」

 わあああ! と、ルイズの時以上の歓声と拍手が沸き起こった。一度大きく両腕を広げたあと、舞台俳優の様に大きく一礼するジェシカに、歓声と拍手が更に強くなる。
 勝ち誇った様な笑みを向けてくるジェシカに、ルイズは引き攣りながらも笑みを返す。

「さて泣いても笑っても今日でチップレースは終わり! タイミング良く今日は月末! お客さまが沢山いらっしゃるわ! 優勝を狙ってる娘も狙っていない娘も頑張ってチップをもらいなさい!」

 声を上げるスカロンに視線が集まり、歓声と拍手が収まり、女の子たちの視線がスカロンに集まる。もちろんルイズとジェシカの視線もスカロンに移動するが、互いの視線が切れる一瞬、二人の手が自主規制が必要な形を取り、

「はんっ!」
「ふんっ!」

 鼻息荒く顔を離した。

「それじゃあ頑張りなさい妖精さんたち!!」
「「「はい! ミ・マドモワゼル!!」」」 

 スカロンが野太い声で発破をかける。女の子たちが声を揃えそれに応え、チップレース最終日が始まった。




 三位と二位との間には、百エキュー以上の差があることから、チップレースは実質、ルイズとジェシカの一騎打ちであった。三位以下の少女達もそれも理解しており、今ではもう、ルイズとジェシカのどちらが一位を取るかで賭けさえ行っている。
 さてそんな中、注目の二人は男たちから順調にチップを巻き上げていた。ルイズは今まで通りに貴族の雰囲気を纏いながらも、儚げに笑い掛け、勘違いした男たちから順調にチップを献上され。ジェシカは何時もの調子を取り戻し、滞りなく様々な嫉妬の魅せ方を利用して男たちからチップを手に入れていた。
 互いのチップの総数は一進一退を繰り返し、決定的な差は未だつかない。相手のチップの正確な総数は分からなくとも、二人共それを理解している。そのため、外見上は平然としている二人だが、内心はどちらも焦っていた。
 そんな時だった。店の扉が開き、新たな客が現れたのは。
 新たな客は貴族だった。
 先頭に立っているのは、どっぷりとついた贅肉が押し上げ、ピチピチになった服を着た男だ。禿げ上がった頭頂部に汗で数本の髪が張り付いた男の背にはマントがあり、手には杖を持っている。どうやら貴族のようだ。後ろに付いている男たちも背にマント、手には杖と貴族のようだが、あまり質の良くない服
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