今日よりも悪くなる明日
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った人々が、あれだけ旺盛に人を捕食しているのに、君は違うと?」
「それは……それは……」
千翼が否定しているとき、友奈は思い出していた。
以前、まだ千翼の体が今よりも小さいとき。ずっと自分の腕を抱き寄せていた。ただの子供の甘えだと思っていたが、あれは彼が文字通り、人肌を求めていたのではないか。
「千翼。君が与えてくれた細胞は、世界を破壊するのにとても役に立っている。見てみろ。この世界に明日は来ない。雨が止めば新しい世界になっているのだ。終わるというのはこんなにも美しい。まさに平和への第一歩だ」
「狂ってる……!」
真司が毒づく。
「千翼」
さらにフラダリは、千翼へ手を伸ばす。
「君はこの世界で生きることはできない。なぜだかわかるか?」
「やっぱり、俺は生きられない……?」
「そう。人間を食らうことは悪とされる。それはなぜか。この世界は、人間が作ったルールに支配されているからだ」
「……!」
「醜い人間……分け合えず、分かり合えず。何も生み出さない輩が、明日を食いつぶしていく……。このままでは、醜い人間たちによって、世界の全てが行き詰まる。全ての命は救えない。選ばれた人のみが、明日への切符を手に入れる。千翼! そして異世界の英雄たちよ!」
雨の中であろうともよく響く声で、フラダリは言った。
「君たちは、選ばれた側の人間だ。アマゾンとなった世界で、私が支配する世界で、生き延びることもできる!」
「……やめてよ」
友奈は首を振った。
「限られた人だけしか明日を生きられないなんて言わないでよ! 住んでる世界の誰にでも、明日を生きる権利はあるはずだよ! それを……それを誰かが奪っていいわけがない!」
「ならば少女よ。君はこの醜い世界を変えることができるというのか? 違う者を受け入れられず、少ないものを分け合えないこの世界を!」
「分からない。もしかしたら、貴方が言う通り、それが人間で、不可能なのかもしれない。でも……」
友奈は胸に手を当てる。
「それでも生きていくのが人間だよ! この世界は、フラダリさんだってまだ知らない可能性がある! アマゾンなんて、他の世界のものじゃなくても、きっと……! それを探し続けていかないといけないんだよ!」
「……君は甘すぎる。そんなことは、私とて当の昔に考えた! その可能性を探し、世界中を回り、まだ見ぬ数多くの可能性にあたってきた」
フラダリの体が、不自然な発熱を帯びた。それは雨を蒸発させ、濡れた髪を一気に乾かしていく。
「何も知らぬ小娘よ。残念だが。私が築き上げる世界に、君は不要だ」
そういいながら、フラダリは白衣の下から何かを取り出した。
黒い、帯のようなものが付随する装置。左右対称なグリップが備え付
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