今日よりも悪くなる明日
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私が思い描く、平和が実現される! 千翼。君のおかげだよ」
「え?」
千翼が目を白黒させている。その横を、真司が走っていった。
「待ってくれ、フラダリさん! これが平和って、いったい何を言っているんだ?」
千翼の前に立ちはだかるように、真司が割り込む。
「君は……いつか取材したがっていた記者だね? どうやってここまでこれた? この病院には、無数のアマゾンがいたはずだが。……まあ、問題ない」
フラダリは新たな傍聴者の存在を認め、まるでホワイトボードを差すように、この地獄となった見滝原を指し示す。
「見たまえ。見苦しいものがどんどん消えていく。美しいではないか」
そこには、アマゾンたちの大暴れの様子が見えた。米粒のような大きさに見えるアマゾンが、より小さな人間たちを捕食しようと襲い掛かる。警察も、何もかもが無力。
時折見える顔見知りのみが、アマゾンに対抗する有効打となっていた。
「千翼。君から生まれたアマゾンたちが、私の怒りを代弁してくれているんだ」
「こんな、人を傷つけて、街を壊していくのが、お前の言う平和なのか!? お前、医者なんだから、人を守るのが仕事だろ!」
「ああ。守るのは……」
真司の怒声に対し、フラダリは静かに、そしてハッキリと告げた。
「選ばれたもののみだ」
「選ばれたって……」
友奈も口を挟まずにはいられない。
「選ばれたものって、何ですか? アマゾンにさせられた人だけなんですか?」
「そうだ」
「それじゃあ、今いる人たちは? 何も知らない、それぞれ必死に生きている人たちだっているんですよ?」
「……」
途端に、フラダリの目つきが変わった。彼の目は、人に対してする目ではない。使えない、道具に対する落胆の眼差しのようにも感じた。
「クトリから、君たちのおおよそのことは聞いている」
「……え?」
「君たちは、異世界で死んだ英雄。聖杯戦争と呼ばれる得体のしれない儀式によりこの世界に呼ばれた死者。そうだろう?」
「だったら何だっていうんだ?」
真司が噛みつく。
だが、フラダリは変わらぬ真っすぐな目で、二人を見据えていた。
「聖杯の亡霊たちよ。この世界で君たちは一体何を守るのだ? 今日よりも悪くなる明日か?」
「今日よりも悪くなる……」
「明日……」
「だが、聖杯は私にも恵を与えた。クトリという少女を媒体に、千翼という無限の可能性を与えた。その細胞を調べたとき私は驚いたよ。細胞単位で人肉を欲する生命体、アマゾンの存在に」
「違う……!」
真司の後ろから、千翼が訴える。
「俺は……俺は……!」
「本当に違うのかね? 君は今までも、人間を食べたいと思っていなかったのか? 君の細胞を受けてアマゾンとな
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