今日よりも悪くなる明日
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千翼は、顔をくしゃくしゃにして、友奈を見上げる。
「今……」
「ど、どうしたの?」
「今……姉ちゃんが……姉ちゃんの令呪が……消えた……」
千翼は四つん這いになり、顔を落とした。
友奈は無言で、じっと千翼を見つめていた。相変わらず警報はなり続けているが、もう警報に従うことはできない。
千翼はやがて、首を振りながら友奈に背中を向ける。
「ま、待って!」
友奈は彼の後を追いかける。千翼はどんどん上の階へ階段を伝っていき、やがて最上階の廊下に差し掛かった。
「待って!」
彼が廊下の奥へ走ろうとしていたが、そこにはすでに先客がいた。
「ん?」
水色のダウンジャケットをズタズタにされた状態の青年。城戸真司。ライダーのサーヴァントは、振り向いたと同時に驚きの表情を見せた。
「あ、アンタはさっきの……!」
「ライダーっ!」
千翼は真司を認めると同時に逃げ出す。友奈の肩を突き飛ばし、そのまま上の階へ逃げていった。
「待って! 千翼くん!」
「友奈ちゃん!? ちょっと待って!」
友奈に続いて、真司も彼を追いかける。
その間、このフロアの一室に、ハルトがいることに誰も気づかない。
雨はどんどん強くなってきた。
千翼に続いて屋上に着いた友奈は、室内との温度差に驚く。
「はあ……」
白い息を吐きながら、友奈と真司はともに逃げ場のない屋上にたどり着いた。
「千翼くん……?」
さっきまで必死に逃げ回っていた彼が、今は屋上の真ん中で棒立ちしていた。
彼の目線の先。アマゾンによって混乱する見滝原を一望できるその屋上に、この事態の発端がいた。
「あれって、フラダリ院長?」
真司の言葉に、友奈は理解した。
フラダリ・カロス。この病院の院長にして、アマゾンの暴走の宣言を行った人物。
灼熱の太陽を擬人化したような人物である彼は、たとえ雨の中であっても煌々とした輝きを放っているように思えた。
フラダリは静かに千翼を、そして屋上入口の友奈、真司へ視線を流す。
「院長……」
千翼の声に、フラダリは少しだけ彼を見下ろした。
「来たか千翼」
その声には、喜びも怒りも、いかなる感情も読み取れなかった。
「どうだ? 素晴らしいと思わないか?」
フラダリが指し示す光景に、友奈は目を疑う。
あちらこちらで悲鳴が上がり、雨でも消しきれない火の手も数多く発生している。世界が終わる寸前の光景だった。
「君のアマゾン細胞のおかげで私の計画も完璧だ。これが私の求めていた平和なのだよ」
「平和?」
「そう。これで、身勝手な人類は駆逐される。生き残った者たちは全て、この私が管理する。これで
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