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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第59話 エル=ファシル星域会戦 その3
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への情報アクセス権、自走可能で蛮人の乱用に耐えられる堅牢性。使う人間次第だろうが、まさに参謀イラズだ。譲り受けた時、思わず出た俺の嘆息に、モンティージャ中佐は皮肉っぽい顔をして肩を竦めて言った。
「こいつに使われるか、それともこいつを使いこなすか。それが情報参謀の適正区分、という奴だね」
「なるほど」
「それとこれが敵の手に渡るような場合には速やかに自爆するようになってる。どんな時も五〇〇メートル以上離れたところに置かないでくれよ。いいお値段するからね」
「五〇〇メートル、ですか?」
「基本的に、コイツは君の『ストーカー』だ。特殊なモード設定をしない限り、一〇メートル以内をついて回る」
「……美女のアンドロイドとか、外見の変更を検討されたことは?」
「……多少型落ちするが、こいつの民生品バージョンもないわけじゃない。だがお値段は巡航艦一隻分じゃ足りないな。そんな貴重品をわざわざ『二足歩行』にする必要はなかろう?」

 巡航艦一隻で何人の愛人を抱えることができるか。まぁアホな真似はしないでおこうと俺は腹の中にしまい込んで、中佐から分析端末を受け取った。その上で使用方法の簡単なレクチャーを受け自室で簡単に生活用品を纏めて、戦艦エル・トレメンドのシャトルハッチに向かう。確かに中佐の言う通り俺の後ろを自走端末は犬のように付いてくる。司令部からの見送りはいないが、ハッチではブライトウェル嬢が待っていた。

「連れてはいかないぞ、ブライトウェル兵長」
「承知しております。今の小官ではどう考えても、自走端末より役に立ちそうにないので」
 これを、とブライトウェル嬢は俺の手を握ると、右手に小さな容器を握らせた。見ればロザラム・ウィスキーの小瓶だった。ブライトウェル嬢は一五歳、当然酒が酒保で手に入れられる歳ではないが……
「父の因縁です。出征の時はどうやら母が預けていたようです。生きて帰って飲む用だと……きっと一〇個月前は、単身赴任だったので忘れていたんだと思います」
「そういえば、リンチ閣下はあまりお酒を飲まない人だった」
 ケリムでも酒ではなくあの糞忌々しいアーモンドチョコレートを手放さなかった。リンチと言えば酒浸りなイメージしかなかったが、それは捕虜生活の中で虚無と悪意と悲観に溺れた結果なのかもしれない。
「俺は酒好きだから飲んでしまうかもなぁ」
「度数が強いので一気呑みは止した方がいいでしょう」
 つい数時間前の因縁を持ち出すブライトウェル嬢に、俺は何も言わず軽く拳骨を握って彼女の頭を叩くと、そのまま背を向けてシャトルに乗り込むのだった。





 到着した降下母艦アルジュナのシャトルハッチには、地上軍の将校たちが待ち構えていた。上は少将から下は中尉まで。二つの師団司令部が勢揃いと言ったところ。中には直接の面識はな
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