"DEAREST DROP"
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えてしまった。
それを戻し、再びシャッフルする。また何枚かが落ちる。
「クトリちゃんが選んだのは、これ?」
クラブのキング。ハートの6は、いつの間にか地面に零れていた。
「そう。それだよ……すごい。どうやって分かったの?」
「……秘密。じゃあ、次」
「うん」
「見える? このハサミ」
「見えるよ。可愛い赤いハサミだね」
ハルトの青いハサミを見ながら、クトリは呟いた。
「指切断マジック。いくよ……」
クトリの前で、右手人差し指をハサミで切るように見せかける。
「切れちゃったよ? 大丈夫?」
「大丈夫。ほれ、この通り」
切れた部分を左手で隠し、再生した指を見せる。
「すごい……みんな、こんなのずっと見てたんだ。羨ましいな」
「まだまだあるからね。次は……」
鳩、火吹き、花。これまでハルトがやってきた色とりどりの芸を、可能な限りクトリに見せていた。
もう目に光のないクトリは、その間、ずっと笑っていた。悲しそうで、それでもどこか嬉しそうで。
そして。
どこからそうなっていたのかは、知らない。
眠るように瞼を閉じたクトリが、いつから言葉を発さなくなっていたのか、もう分からなかった。
それでも、ハルトは止まらなかった。
やがて、全てのタネを使い尽くすまで、ハルトのショータイムは終わらなかった。
___最後まで、自分のことを大切に思ってくれたことが、大切だと思った___
___思えたことが、幸せだった___
___だからきっと、今の私は、誰が何と言おうと……世界一幸せな女の子だ___
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