"DEAREST DROP"
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「お願い、いいかな?」
「何?」
途中で、全身に痛みが走る。足の支えが不安定となり、全身が床に張り付いた。
「私が消えても……覚えていてくれる?」
「……」
目を反らす。すると、すぐそばに、キックストライクの指輪があった。
「私も今の世界を壊したくない。でも、私が生きていたらいけない。だから、ハルト君」
彼女の声が震えていく。
「お願い」
「うわあああああああ!」
ハルトは指輪を掴み、そのままベルトに入れる。
『キックストライク プリーズ』
これまで生身で使ったことがない指輪。地面に赤い魔法陣が出現し、その上でウィザードのときと同じように、腰を下ろす。
「忘れない……忘れない! 君のその願いは、俺の希望だから……!」
ウィザードでないとき、足はここまで発熱するのか。
ハルトは、そのままかけていく。
クトリのセニオリスを蹴り上げ、彼女の手から離す。
一瞬クトリは驚いた顔をしたが、すぐに安らかな顔をして。
「ありがとう」
ハルトの赤い蹴りが、クトリの胸を貫いた。
「ねえ」
消え入りそうなクトリの声。自身の膝の上で、穏やかな表情のクトリは、眠そうな目で、ハルトを見あげていた。
「お願いがあるんだけど。聞いてくれない?」
ツーサイドアップの髪はまだ紅いまま。蒼に戻ることなく、ヒガンバナのようにハルトの膝元で咲いている。
黒い衣装はすでにボロボロになっており、セニオリスもまた無造作に彼女の手元に打ち捨てられていた。
「何?」
意識して、ハルトは震えを押し殺した。それがクトリにはどう伝わったのか、彼女は少しほほ笑みながら続けた。
「君のマジック……見せてくれない?」
「マジック……大道芸のこと?」
「うん。ほら、私いつも仕事が入って、君がいるとき、あまりここにいられなかったから。だから」
「……嫌だ」
「ハルト君?」
「それって、最期のお願いのつもりなんだろ? 俺は……」
「あはは……ハルト君、結構意地悪だね……ゲホッ」
吐血。だが、クトリのそれは赤くない。その赤を全て髪にもっていかれたのかと思うほど、その血は黒かった。
「アマゾンの血……」
「ねえ。お願い」
「……」
ハルトは静かに、キックストライクのままの指輪を入れ替える。
『コネクト プリーズ』
「ここに取り出しましたるのは、ごく普通のトランプです」
震える手つきで、ハルトはトランプをシャッフルする。数枚が零れ落ちるが、気に留める者はいない。
「じゃあ、ここから一枚選んで。俺に見えないように」
「じゃあ、これ」
ハートの6。クトリの体勢のせいで、思わず見
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