"DEAREST DROP"
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!」
「……」
「俺は……俺は、人を守るために魔法使いになったんだ……! 傷つけるためなんかじゃない……! 俺のこの力は、ファントムだけに使うもののはずなのに……!」
「……ね」
「何?」
突如としての彼女の呟きが、ウィザードの耳に強く印象付けられた。
お互いの刃物を弾きあい、ウィザードはクトリに向き合った。
「なんか、悲しいね」
クトリはそう言った。
まだ年端も行かない少女だが、その表情はとても幼いそれとは思えない。うっすらと笑って見せているが、見ているだけで、ウィザードは悲しくなってきた。
「私たち、せっかく仲良くなれたのにね。千翼があれこれ我儘言って、ハルト君がマジックを見せに来て。私は、折角なのに仕事が入って何も見れなくて」
「……」
「何がいけなかったんだろうね? 生きている、ただそれだけなのに……それだけなのに……ハルト君を食べたくて食べたくて仕方がない……!」
紅い髪を揺らしながら、クトリは叫ぶ。
「それなのに………それなのに……!」
クトリはセニオリスを振り上げた。
「どうしたら……君に……伝えられるんだろう?」
「え?」
それ以上は聞けなかった。セニオリスから放たれた斬撃をよけることを優先し、聴覚が使用できなかった。
その間も、クトリは続ける。
「君と……みんなといると、知らないことばかり覚えていった……! こんなことになるくらいなら、忘れ方を教えてよ!」
蝶の翼を用いて、クトリは飛ぶ。
突風により、ウィザードは壁際まで飛ばされる。そのまま、セニオリスを振るったクトリに対し、ウィザードは別の指輪を使った。
『ディフェンド プリーズ』
発生した赤い魔法陣でその斬撃を防ぐが、斬撃との対消滅の末、ウィザードが弾かれる。
「生きたいと願うなんて思わなかった……! 当たり前のように、聖杯戦争で死ぬんだと思っていた……! 君が、君たちが、私を生きたいって思わせてしまったんだよ」
「っ!」
接近してきたクトリを、ウィザーソードガンで受け止める。そのまま、腕が触れ合う。すると、彼女の熱くなっている体温が伝わってきた。
そのまま、クトリのセニオリスが何度も何度もウィザードへ斬りかかる。
「ぐっ……!」
全てを受け流し、ウィザードはクトリから距離を取った。
『キャモナスラッシュ シェイクハンド』
『フレイム スラッシュストライク』
ウィザードとクトリが、同時に刃を振るう。斬撃の軌道がそれぞれに跳び、互いに命中。
ウィザードは変身を解除すると同時に地面を転がり、クトリも防御に回した蝶の翼が大きく擦り切れている。
「ねえ……ハルト君」
よろよろと起き上がるハルトへ、クトリは言った。
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